【刀剣乱舞】今からできる！？ブラック本丸立て直し術（仮） (ページ12)

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「さあ、やり直そう」ページ12

　戦えない
　それだけで、何のために顕現したのか
　わからない、わかりたくもなかった
　ただあの部屋で、何度も兄弟を見送った
　出ること叶わず、「大丈夫」という言葉は信じられず、すがり付くように襖に爪を立てた
　声が嗄れ、涙も枯れ、叫ぶ気力すら無くなったある日

「もう、疲れました」

　その言葉を最後に、彼は人の形を保つのをやめた
　いつか解放されると信じていたものは、訪れなかったのだ
　だったら待っていた所で無駄だ

「そうして、僕は刀に戻りました。動けぬのなら、同じでしょう。……それを」

　貴女は、忘れたのですか

　酷く冷たい声で、憎しみを込めた言葉を紡ぐ
　審神者は答える

「貴方は、戦いたいの？」
「質問に答えてください」
「うーん、でも私も今の貴方を戦わせたくはないんだよね」
「……っ！いい加減に」

　宗三が顔を上げる
　その先で、彼女は笑っていた
　邪気などなく、ただ優しい顔で
　嘘偽りなど、疑えないほどに

「やっとこっち見た」

　ふにゃりと、笑う
　本当に先ほどの鋭い目をしていた人なのか、と宗三は別の意味で震える

「私はね、宗三。貴方の知る私ではないの。だからここで何が起こったかは知らない」

　宗三は無意識に、後ろに控えている２振りを見る
　三日月は微笑み、腕を組んでうんうんと頷いている
　則宗はというと、やや眉を潜めているが、納得しようとしている顔だ

「ここからやり直そうと思うの。それには三日月や則宗さんだけじゃなく、貴方たちの力も借りたい」

　運良く三日月が自身を「主」と呼ばなければ、恐らく自分は死んでいた
　ここの現状を全て知るわけでもない
　だが、苦しんでいるのなら

「すぐに信じろとは言いません。本当に何も知らないのだから、これから何度も失敗を重ねるのでしょう」

　それでも、と彼女は続ける

「貴方たちを死なせるような無茶だけは、しないと誓います」

　──この人は
　こんな目をする人だったろうか
　こんな言葉をかける人だったろうか

　宗三の目から何かが溢れ出す
　無意識に嗚咽が漏れる

　──希望も夢も、憧れも、自由も
　全てを貴方に奪われた
　それでもまた、貴方は見せるというのですか
　兄弟たちとの日常を、夢見てもいいのですか
　また奪われてしまうのが、途轍もなく、怖い

　それでも、と宗三はもう一度顔を上げる
　例え一時の幸せだろうと、兄弟と過ごせるのなら、仇の手を取ろう

「改めまして──僕は宗三左文字。天下人の象徴です」