彼らの抱えたもの ページ11
「うーん困った」
刀から顕現させたはいいものの、体を震わせて何も動けなくなった刀が３人
大包平は白山を追って、先ほど部屋から出ていってしまった
「三日月、この人たちが何に怯えてるか知ってる？」
原因が分かれば、対処できるかもしれない
そう考えて審神者は色々と知っている三日月に聞く
「……彼らは」
ポツリと、話し始める
「兄弟を目の前で折られた」
それだけではない、と本体を鞘に納めた則宗が続ける
「堀川の小僧は、暗殺や闇討ちを得意とする刀だ。故にこの本丸に関係する汚れ仕事のうち、ほとんどをやらされていた」
「……その中に、“気に入らない”で消された人や刀もいるわけか」
「そうさな……」
則宗は、明るくなりつつある空を見上げて、呟く
「やがて、兄弟である山姥切と山伏を自分の手で折った際、堀川は刀に戻ってしまった」
空は明るくなるというのに、話題は暗くなる
「物吉は、主に幸運を届けることを良しとしていた。だが、その幸運はいつしか不幸しか呼べなくなってしまった」
欠陥品、バグ個体、呼ばなければよかったと
何度も言われ、それでも、と真っ直ぐに必死に頑張っていた結果はこれだった
「……」
刀の方が幸せなのだろうか、と審神者は考える
だがそれは、と同時に思うのだ
「宗三さんは？」
「宗三は……」
「僕から話します」
声は、宗三から発せられた
未だ震えた体で、こちらをやや睨み付けながら、体勢を変えずにそのままで
だから審神者は、宗三と視線を合わせるために座る
その動作に彼は目を見開いた
距離は取った
それでも、植え付けられた物から目を逸らすことはできない
悔しそうに彼は唇を噛み締める
「その前に。一文字則宗」
「……今のところ、信頼できると考えているな」
肝心な所は大体ぼかして答えているが、それがどちらにも伝わる回答であることは、審神者も則宗も気付いていた
だがそこはつつかない
今はそれよりも情報を集めるべきだと、審神者は判断する
「……兄と弟を、殺されたのですよ。貴方に」
小夜左文字、太閤左文字、そして江雪左文字
血を流して門を潜った彼らの姿が、焼き付いて離れない
それでも、宗三はこの本丸から離れることができなかった
──籠の鳥なら、ここにいればいいじゃない
ただそれだけで、宗三は１度も戦場に出されなかった
この本丸のある部屋から出ることのできない、正に籠の鳥とされていたのだ
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作者名：とあるさにわ | 作成日時：2022年8月2日 0時
