始まり ページ2
──いつもと同じ光景
色褪せた世界で、何かを命令する主
……わからない
僕たちは刀で、物で
使われるのがきっといいはずなんだ
折れるまで使ってもらえるのは、いいはずなんだ
でもどうしてかな、主
あの時隣で苦しそうに息を引き取った清光の顔が離れないんだ
ねえ、どうしたらいいの
どうしたら──
──たすけられない
たすけては、ならない
それが、主命
主命であるなら、従うのみ
……でも
わたくしは、彼らをたすけられるのに
どうして、どうして彼らを治癒してはいけないのですか
この力は、なんの、ために──
──もうすぐだ
もうすぐであの女はいなくなる
いつもそうだった
なら、俺はあの女を主とは呼ばん
俺の主は、あの人だけだ
姿形、声も同じなれど、確かに異なる主を
早く、早く来てくれ主
俺の心が壊れる前に
ここの刀たちが主の体を傷付ける前に、早く──
「んがっ」
およそ女子の上げる声ではない、とその場にいる誰もが思っただろう
それでも後頭部を抑えながら彼女は起き上がる
「陽葵〜。今日の予定は？」
いつもよりどこか重い頭を上げ、暢気にアクビをするここの審神者
……であったもの
目を擦る彼女は頬を叩いて気合いを入れる
普段自分が起きるより前に部屋に入り、予定を事務的に言うメイドの声がしないことに違和感を覚えた審神者は、目の前に広がる光景に声を漏らす
「ええ……」
あまりにも殺気立った男性が刀を持ってこちらを睨んでいる
その時、審神者は仮説を即座に立てる
自分は寝室にいた→目を覚ましたら別の場所→しかも殺気立ってるやつらに囲まれている
なるほど、と審神者は豆電球を浮かばせる勢いで閃いたという顔をした
「どこの組が拐ってきたのかは知りませんけど、身代金なら多分たくさん出せると思うので、運良かったですねー」
自分は拐われたものだと思っていた
だが次に飛んできたのは言葉の刃
「何を言ってるんだ」
「寝惚けてるとちゃいます？」
「え？違うの？」
あまりのことについ素で反応する審神者
立ち上がろうと前屈みになると、さらりと自身の髪が落ちてくる
その色は黒い髪などではなく、茶色の髪
「え」
審神者は思わずフリーズする
それから自分の体を見ては、叫び声を上げる
「何これー！？」
自分の体ではないことが分かった審神者は、刀身に映った顔を見ては絶句する
先程の叫び声で誰かが部屋に入ってきた
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作者名：とあるさにわ | 作成日時：2022年8月2日 0時
