181話『シンドバッド目線』 ページ47
バルコニーに出ると、夜風が頰を撫でる。夜空を見上げると、まるい月が大きく見えた。今宵は月が近く、綺麗だ。
「月、綺麗だね」
月を見た俺に対し、Aがそう言って笑う。その時、ぎゅっと胸に心地よい痛みが広がる。
同じ景色を見て、同じことを思えるだけで、たまらない気持ちになった。
「……すまない。俺の勝手な都合で、Aの昔の仲間を…………」
「ええ、シンドバッドがどうして謝るの?あなたはあなたの信念を突き通した、ただそれだけだよ」
「だが……」
「本当に、いいの」
眉を下げて、Aは微笑んだ。
「私は全てを救いたいけれど、それは私の我儘だから。世界が前に進むにつれて、物事は変化して淘汰される。これは、当然のことだから……」
「それで、平気なのか?」
俺の問いかけに、Aは俺の目を見た。静かに首を振る。
「運命だって最初から諦めて、全部受け入れられたら、楽なんだろうな」
ぽつり、と呟くAは、どこか遠くを見るように目を細めた。その瞳の奥に垣間見えた闇の深さが、恐ろしく思える。
「イスナーンが目の前で消えてしまった時、悪いのは救えなかった私なのに、シンドバッドのせいで消えたんだって思い込むことで自分を責めることから免れようとした……。本当に、ごめん」
また頭を下げたAを、俺は肩を持って顔を上げさせる。
誰より強い力を持っている彼女はその実、誰よりも弱い存在だった。目の前で消えそうになっているAなんて、もう見たくない。
Aを守りたい。Aの顔を曇らせたくない。その一心で、俺は言葉を紡いだ。
「いいんだ、俺を恨んでも。全部俺のせいにして、それでAが笑ってられるのなら……生きて、くれるなら」
俺の言葉に、Aは大きく目を見開く。
「そんなこと、できるわけないよ!!」
「やればいい。俺は君が健やかに生きてくれるのなら、どんなことだってしてみせる」
なんで、とAの口元が動く。声は出ていなかった。なんで、なんて。まるでこの間までの俺のようだ。
もう俺は、何故かなんて分かりきっていた。
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中学生なのに暇人 - 織叶さん» コメントありがとうございます( ; ; )応援、とても嬉しいです。続きを待っていてくれて本当にありがとうございます!更新、頑張りたいと思います! (2019年10月21日 2時) (レス) id: 5432413cdc (このIDを非表示/違反報告)
織叶(プロフ) - 更新おつかれさまです!続きを読むことができてほんとうにうれしいです!!ジャーファルとシンドバッドの会話が素敵だなって思いました…!これからも応援しています! (2019年8月30日 19時) (レス) id: da72fed0d7 (このIDを非表示/違反報告)
りほこ(プロフ) - 続きが見たいですー!!!!!更新頑張ってください!!!!!!!!! (2019年1月31日 18時) (レス) id: e6d24bafa3 (このIDを非表示/違反報告)
ルナ - 更新楽しみにしてます^^* ゆっくりでもいいので、更新頑張って下さい! (2018年10月22日 3時) (レス) id: cfa47c9152 (このIDを非表示/違反報告)
ネギマ(プロフ) - 更新待ってます。 (2018年9月28日 2時) (レス) id: 97ed89bb2d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:中学生なのに暇人 | 作成日時:2014年8月7日 22時