174話『シンドバッド目線』 ページ40
「……A」
鉄格子の中で、すぅ、と小さな寝息を立てて寝ているAに、少し安堵する。
また、あの目を向けられなくて良かったと、シンドバッドは緊張を解くように息を吐いた。
脳裏に深く焼き付いているのは、昨日のAの錯乱状態だった。
発狂し、大粒の涙を流して、それでもその目は確かにシンドバッドに向けられていて。
その目に宿っていたのは──殺意。
単純で、明確で、間違えるはずもないその気配。
彼女は確かにシンドバッドを殺そうとしていた。
その事実に、俺は酷くこたえた。
あまりにも衝撃すぎて自身では対応できず、周りの部下などが必死にAを止める様子を、シンドバッドは呆然としながら見ていた。
やはり、昔仲間だったというあの男を消滅させてしまったことが原因なのだろう。
当然、それは当初からの目的であった『アル・サーメン』を一人残らず生かしてはおけないという信念の元でシンドバッドはあの地へ向かった訳だが。
結局のところシンドバッドは──目の前で死にそうになっていたAを見て、あまりの怒りに我を失っていた、というのが正しい。
怒りのままに、力を振りかざしていた。
なんて幼稚で稚拙な行動だろう。一国の王として、シンドバッドは自分を責めた。
「……ジャーファルか」
いつの間にか背後に現れた者に気付き、シンドバッドは横目でジャーファルを見る。
「はい、シンドバッド王……」
「Aはどんな様子だった」
「昨日のことは覚えておらず、まるで人形のようでした。光を宿していない、真っ暗な瞳で……まるで全てに絶望したかのような」
真っ暗な瞳。彼女のそんな目を見たくなくて、俺はAを傷付けるものを排除したのだ。
Aの喜ぶ顔が見たくて、ただその一心で。
なのに結局、彼女を傷つけてしまった。
「なんでこんなに、苦しいんだろうな」
苦しくて苦しくて、息がつまりそうになる。悲しい、彼女を見ていると、辛いんだ。
「気付いてなかったんですか？」
意外そうに目を丸めるジャーファルに、シンドバッドは「何のことだ？」と返す。
呆れたようにジャーファルは息を吐き、ジト目でシンドバッドを見つめた。
「あんたが、Aを愛してるってことですよ」
「……俺が、Aを？」
あまりの衝撃に、今度はシンドバッドが目を丸くした。
いやまさか、そんな、だって。
数々の言い訳のような言葉が頭の中を闊歩する。
「俺は……」
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中学生なのに暇人 - 織叶さん» コメントありがとうございます（ ; ; ）応援、とても嬉しいです。続きを待っていてくれて本当にありがとうございます！更新、頑張りたいと思います！ (2019年10月21日 2時) (
レス) id: 5432413cdc (このIDを非表示/違反報告)
織叶(プロフ) - 更新おつかれさまです！続きを読むことができてほんとうにうれしいです！！ジャーファルとシンドバッドの会話が素敵だなって思いました…！これからも応援しています！ (2019年8月30日 19時) (レス) id: da72fed0d7 (このIDを非表示/違反報告)
りほこ(プロフ) - 続きが見たいですー！！！！！更新頑張ってください！！！！！！！！！ (2019年1月31日 18時) (レス) id: e6d24bafa3 (このIDを非表示/違反報告)
ルナ - 更新楽しみにしてます^^* ゆっくりでもいいので、更新頑張って下さい！ (2018年10月22日 3時) (レス) id: cfa47c9152 (このIDを非表示/違反報告)
ネギマ(プロフ) - 更新待ってます。 (2018年9月28日 2時) (レス) id: 97ed89bb2d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：中学生なのに暇人 | 作成日時：2014年8月7日 22時
