リライト 2 (ページ46)

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「慎太郎だって線香もお花もやってくれたし俺よりも長く手を合わせてた。俺が死んで仕事やめたいって言ったときも、そんなことしないでって抱き締めてくれた。

俺を売ろうとしてたあんたとは違う！！

俺は！」

ユウが隠し持っていたナイフを取り出して立ち上がる。伊藤へと刃先を向けた。

坂口が背をユウに隠したまま距離を取る。伊藤も静かに後退した。

「だから騙されたフリをしたと。C08、松村北斗を担当していたのは私ではなく京本と森本ですよ？」

「あぁ最近気づいたよ。でも永久雇用契約を説明してる所を見たことがない。あんたが京本さんの邪魔をしたくてやったんだろ？俺のことも、、。」

永久雇用が嫌で北斗は死んだと聞いていたユウはいつか会社を潰してやろうと考えていた。

しかし働き始めて見えたものがあった。伊藤のような人間だけがいるのではないと。自分なりにずっと調べて、もがいて、こらえて生きてきた。

だからわかる。

北斗が、裏切らないと信じたものが。

「死んでも良い。ただあんただけは！」

刃先が震えている。溢れ出す怒りと憎しみに体温が上昇していく。追い討ちをかける人を殺す恐怖は、ユウを取り乱しているに等しい状況までにしていた。

「だったら2人共殺してください。計画は坂口、実行は私です。」

坂口の襟を掴んだ伊藤が強引に引き寄せる。自分の目の前に凶器が来てしまった坂口は、戦慄きながら両手を上げた。

「違う！俺はまさか死んじゃうなんて思ってなかったんだ！！京本から奪えればダメージになるって！」

盾になっている間のベンチから離れて伊藤がユウがいる方へと歩いていく。坂口はヒィヒィと泣きそうになりながら引きずられた。

そこに森本の叫びが届く。

「ほら、やってみたらどうです？」

「ユウ落ち着いて！」

「もううるさい！！ほっといてよ！」

チャンスだと思った。

坂口に乗れば会うことも出来なかった伊藤に会えるのではないかと。北斗の夢も人生も奪ったあの男に復讐が出来ると。

ユウがナイフを握る手に力を入れる。ペンダントが月明かりを反射すると同時にジェシーが飛び出してユウの手を掴んだ。