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岩盤のように重い布団を捲る。砕けそうな腰を擦りながら2段ベッドを抜けようとすると、あくびをしながら北斗がはしごを降りてきた。
「おはよ、マジかぁって何?」
「え?何でもないよ。」
「そう?ちゃんと覚えてる?今日発表だよ。」
「あれぇ、そうだっけ?」
手櫛で猫ッ毛をとかしながらユウはベッドを降りて北斗の勉強机に体重をかけた。
「しっかりしてよ。優吾フルーツ切って。俺顔洗うから。」
「俺だって洗いたいよ。切るのはいいけど。」
意識を冷蔵庫へと集中させて重心が定まらない体を運ぶ。変化する自分の重さで床に倒れ込んでしまいそうだった。
冷蔵庫を開けると、昨日は無かった苺が入っている。バナナ1本で朝食を済ませてしまうこともある北斗であったが、今日は気合いをいれて豪華にいくらしい。ますますユウにくらみが襲った。
「はぁ、、」
「もったいないから閉めてよ。」
「うわぁあ!」
真横から北斗の声がして、ユウから大きな声が出た。バランスを崩したユウを支えた北斗からピリッとした空気が放たれる。まずい。ユウは北斗に悟られないように体を自分で支えて苺を素早く取り出した。「美味しそう。」と心臓をバクバクさせながらキッチン台へと向かった。
北斗の様子を探ろうと背中の神経が過敏になる。
「どうする?全部切っちゃう?」
普通の返事をしてくれ。
祈りながら手と苺を洗っていたが、北斗は何も言わずに外へ行ってしまった。
「あら、、どこ行った?」
玄関を開けて外へ顔を出すも北斗の姿はない。追いかけようにも体が言うことを聞かず、閉めてへたりと玄関に座り込んだ。
節々が痛む。
これはたまったもんではないとユウが立ち上がりベッドへ行こうとすると北斗が戻ってきた。
「どこ行ってたの?」
「事務所。今日は辞退するって言ってきた。」
「は?何言ってんの?何のためにお前練習してきたんだよ。」
「それはそっちも同じでしょ?具合悪いなら寝てなよ。」
北斗が靴を脱ぎ捨てて洗面所で手を洗う。
ユウは北斗の行動に騒然としていた。ユウには理解が出来なかったのだ。デビューに誰よりも貪欲な北斗が簡単にその足掛かりを蹴飛ばすことが。
「勝手に決めんなよ。」
「勝手じゃないよ。どうせ良いパフォーマンスはできないし。」
「解熱剤飲んどきゃなんとかなるって!こんな大事なやつ熱なんかで辞退出来っかよ!」
淡々と苺を切っていく北斗の肩を掴んで振り向かせる。
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作者名:久遠さん | 作成日時:2021年9月19日 0時