リライト 2 (ページ34)

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「昔、ナナセという家政婦がいた。名前は松村北斗。高校を卒業したばかりの18才の男の子だった。

うちは消費者金融で返済が滞っている人間の代わりに返済して、うちでそれ以上働かせる仕組みをとってる。返済ができるまで戸籍は無いも同然。死ねばその戸籍も健康な臓器も全部金にされる。

そんな場所にナナセは親の多額の借金のせいで送りこまれてきた。ナナセは心底絶望していると思ったがそうじゃなかった。希望をもって働いていた。」

「いつになったら出られますか？俺。」

「さぁ。でもAまでいけばずっと早く出られるはずだよ。」

「じゃあ俺頑張ります。待たせてる人がいるから。」

「そっか、俺も頑張って交渉するよ。」

「待たせている人がいると。生き生きしていた。闇しかないこの仕事を抜け出せない俺にとって、あの子は希望だった。でもそのせいで、、伊藤に目をつけられた。」

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No side

「初めてだな。」

会社の廊下を歩いていた京本に倉沢が肩を弾ませながら声をかけた。

京本を危険分子だと見なしてこの会社に軟禁している倉沢が京本と話すのは会議中でも珍しい。

それが向こうから話しかけてくるなんて、と京本は思案した。まさか声をかけたのが初めてと言っている訳ではあるまいと。

「何のことですか、社長。」

「永久雇用契約、決まったそうじゃないか。やっと言うことを聞くようになってきた。」

「っ、、えぇそうですね。非常に気に入っていただけたようで。」

身に覚えがないことが起こっている。内心動揺なんて程度では無かった。京本は永久雇用契約というものに賛成していない。それ故によっぽどの家政婦側の賛同がない限り利用者への説明すらしていないのだ。

もちろん永遠にこの人と一緒にいたいと言い出す家政婦なんておらず、持ちかけたことすらない。

「まだ若いから気に入ったんだろう。顔もいいし聡明な子だと聞いた。お前がランク上げを提案していたのも納得がいった。」

全身の毛が逆立った。

京本は倉沢の話も聞かずに伊藤のところへと駆け出した。暗いオフィスにあの男はいない。

「まだ戻ってないのか。くそ。」

誰かに聞かれてはまずいと人のいない駐車場へと降りていき、柱の裏へと隠れて伊藤へ連絡を入れた。

待っていたかのようにワンコールで伊藤が出る。