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No side

2017年 3月

「卒業おめでとう。」

「え、、くれんの?開けていい?」

2段ベッドが置かれる部屋で、ブレザーを着て胸に花が刺さった青年とTシャツにパーカーを羽織った青年2人が床に座っている。

ブレザーを着た青年は、ぶっきらぼうに渡された焦げ茶色の長細い箱を丁寧に開けて中身を確認した。

犬歯が見えるほど口を開けて目を輝かせる。

「かっこいいじゃん!マジで作ったの?優吾。」

「北斗が欲しいって珍しく言うからさ。」

「すごぉ、、。」

北斗が鏡の前へと移動して自分の首へペンダントをかける。自分の名前にちなんだ北斗七星が光った。

「本当にすごい。」

「めっちゃ調べた。趣味のレベル越えたよ。」

「ありがとう。大切にする。」

「あっそ、、。」

お互いの人生を振り回しあって出た結論が"一生一緒"であった。初めは冷たく見えた北斗がこれほど懐いてくれるほど連れ添ってきたらしい。そのせいか正直な言葉に恥ずかしさを覚える。

しかし優吾は嬉しそうに鏡を見続ける北斗を可愛らしく思えてこっそりと写真におさめた。

「ねぇ、」

と北斗が自分の方を向いて優吾が慌ててスマートフォンを隠す。

「何?」

「外騒がしくない?」

どうせ子供たちが遊んでいるだけだと思っていたら、黒い影が自分達の部屋の前を通ってガチャリと扉が開いた。

「北斗、こっちに来い。」

優吾の背中に北斗がくっつく。胸が早鐘を打つ。

現れた男はジト目で優吾たちを見下ろした。

「誰だよ、あんた。」

「Kurasawahouseholdの伊藤と申します。

松村北斗さんはいらっしゃる?」

部屋を見回した伊藤は、あぁ、と北斗を見つけ土足で中へ入ってきた。優吾が後ろで北斗の両腕を掴み、離すまいと伊藤を警戒して睨む。

「人間は、ゴミを庇う必要なんて無いんですよ?」

「誰のこと言ってんだよ。」

「この方です。残念ですが、あなたのお母様も失踪してしまいましたのであなたに返済してもらうことになりました。」

優吾の背中に語りかける伊藤は、問答無用に優吾の首根っこを掴んで北斗から引き剥がした。投げられた体がベッドへとぶつかる。

「優吾!」

「心配なさってる場合ですか。」

「あ"っ!」

伊藤が北斗の鳩尾を殴り、北斗が気を失う。複数の男たちが入ってきて北斗の体を持ち上げた。

「待てよ!い"っ!!」

伊藤に蹴り飛ばされた優吾は頭を打ち、運ばれる北斗へ手を伸ばしながら気を失った。

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作者名:久遠さん | 作成日時:2021年9月19日 0時

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