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No side
2017年 10月
「長い旅の途中僕らは___。」
自然公園の小山の上、木製のベンチに腰かけて縁を握るナナセは優しい太陽の明かりに包まれながら未完成な歌声でお気に入りの歌を口ずさんだ。
「ナナセ、それはなんて歌だい?」
「『光る、兆し』俺がすごい好きな歌だよ。」
「誰の歌?」
「言ってもおじいちゃん知らないよ。」
「教えてくれたっていいじゃないか。」
隣に座る新内が年柄もなく口をすぼませてふてくされたのを肩をすくめてナナセは笑った。
借金返済のために無理やり家政婦という名前の
ごく普通の家政婦の仕事をして空いた時間に新内に渡された経営や薬剤についての本を読む。意図はわからなかったが苦という訳ではなかった。質問をすれば嬉々として新内は答えるし、素人ながらに意見を話すと真剣に議論をしてくれた。
眺めがよく広々としているこの場所だが、そこそこ長い距離を登らなくてはならないから人は来ない。
新内に登らせるのは気が引けたが、ナナセが行きたいのならと休み休み登ってくれた。
「SixTONES。俺が憧れるかっこいいアイドルの歌だよ。」
「へぇー、そうか。もっと聞かせて欲しい。気に入った。」
「おじいちゃん調べて聞きなよ。せっかく教えたんだから。」
「いーや、ナナセの声で聞きたいんだよ。」
そう新内が言うと、暖かい日差しに負けないほどに綺麗にナナセは笑った。
「いいよ。光る 兆し奇跡のカケラが集えば____」
ナナセの優しい歌声に新内が聞き入る。穏やかな祖父と孫の時間がそこには流れていた。
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作者名:久遠さん | 作成日時:2021年9月19日 0時