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ユンギさんはわたしを解放してくれることなく2人とも一緒に床に転がるような形だった。
「あの…ユンギさん?」
再び声をかけても今度は返事もしてくれなくて。冷たい床にわたしたちは転がったままで。ユンギさんに触れているところだけが温かった。
「つかれた」
ぽつりと漏れたユンギさんの言葉にわたしはびっくりして、ユンギさんを抱きしめる腕の力がこもった。ユンギさんも同じようにわたしの体に回している腕に力をこめる。
なんでわたしたち床で転がってるんだろうって思うけれど…必死に縋りつくようにわたしを抱きしめるユンギさんの様子に、そんなことはどうでもよくなって。ただただユンギさんの温もりを感じて、ユンギさんを抱きしめてあげることだけを考えていた。
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「ユンギさん?」
どれくらい時間が経ったのか、わたしの上にいるユンギさんの重さをより感じるようになって。そして力が抜けていく腕。僅かに聞こえる気持ちよさそうな息遣い。それに気付いて驚いて彼の名前を呼ぶ。けれどユンギさんから返事は返ってこなくて。
「あの、寝ちゃったんですか…?」
あんなに眠れないっていうメッセージをわたしに送ってきていたのに。わたしと会ってすぐに寝ちゃうんなんて。寝れるぐらい安らいでくれると喜ぶべきなのか、寝られてしまうほどの存在感なのかと悲しむべきなのか…
何度か声をかけても起きる気配がなくて。上に乗られたままどうすればいいのか困って、暫くそのままの状態でいた。
けれどハッと顔を上げて。このままではだめだとごそごそ動く。眠ってしまったことで力が抜けたのでユンギさんの腕を引き剥がせそうだった。
そっとユンギさんの腕を自分の体から離して彼の下から這い出る。このまま床に寝させておくのは申し訳ないけれど、とてもじゃないけれど寝ている成人男性を運ぶのは無理で。引きずるわけにもいかないし…と少し悩んで、寝室から毛布を持ってくることにした。
一枚は床に敷いてユンギさんの体を何とか転がして毛布の上に寝かせる。そして上から毛布をかけてあげる。これでも起きたら背中は痛いと思うけれど…ないよりマシでしょう。そう自分に言い聞かせてユンギさんに謝る。
気持ちよさそうに寝ているユンギさんの綺麗な寝顔は、いつまででも見れいられそうだったけど…前回うちに来た時に何も食べていなかったことを思い出して。何か作ろうとキッチンに向かった。
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涼音1006(プロフ) - 藍さまのお話を読むと、しっとりした空気を感じたり、優しいメロディーが聞こえてくるようでとても心地良いです。1日の終わりにベッドの上でゆっくりと読み返すのが楽しみです。これからも応援しております!お身体にきをつけて下さい(*^^*) (2021年6月3日 20時) (レス) id: 12686616a5 (このIDを非表示/違反報告)
涼音1006(プロフ) - 藍さまはじめまして!「キミと奏でる〜」のキラピュアなユンギ氏と(←言い方)、「ひと夏〜」のチャラ甘で砂糖増量(←言い方!)なユンギ氏が最高すぎて、ここ数日で一気読みさせて頂きました♪続→→ (2021年6月3日 20時) (レス) id: 12686616a5 (このIDを非表示/違反報告)
藍(プロフ) - 天然記念物さん» こちらこそ素敵なコメントありがとうございます。1番だなんて、そんな恐れ多いお言葉!嬉しい限りです。次回もキュンキュンできるような作品をお届けできるよう頑張ります。 (2018年8月20日 23時) (レス) id: 7c0b28e720 (このIDを非表示/違反報告)
天然記念物(プロフ) - とても面白かったです。今まで読んだ中で私的に1番キュンキュンしました!素敵な作品をありがとうございました。次回の作品も楽しみにしてます。 (2018年8月20日 22時) (レス) id: 70eef4ddd6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藍 | 作成日時:2018年8月12日 12時