【YG】キミと奏でるメロディー

＃19 ページ19

.


Aと連絡先を交換した時のことを思い出してにやけそうになった。まぁマスクしてるからにやけても多分バレないけど。

俺が久しぶりに会いに行けば嬉しそうに笑うけど、まさかそわそわしながら俺がいつ来るかと待ちわびていたとは。Aの言葉を信じていなかったわけじゃない。わたしも会いたかった、いつ来るかなって待ってました、そう言われて嬉しかったけど。やっぱり連絡もなく何日も俺がくるのを待ち続けるのは辛かったのだろうか。俺との繋がりを持ててあんなに嬉しそうにしてくれるとは思わなかった。

Aとの最初のやり取りは無事に宿舎に着いたことを伝えたメッセージだった。俺が帰る時から携帯を握りしめていたから返事は早かった。

次の日、仕事が終わってくたくたになっていた時に連絡した。それにはすぐに返ってこなくて、やっぱり携帯してねぇなと呆れた。

翌日、起きてみるとAからの返信があった。それで随分早起きなのだと知った。でもAからはあまり連絡がこなかった。というか、俺が送った連絡の返事がかなりの時間を置いてからきて、それに俺も空き時間に返すからだいぶ時間が経ってからで、そうやって長々と時間をかけてやりとりをしている感じだった。

それでも過酷なスケジュールや、容赦ない練習に心身ともに疲れている時の唯一の癒しだった。本当は直接会って触れたいなって思うんだけど。でも実際に会うと触れるのに躊躇する。触れたのは頭を撫でた、あの時だけだった。それすらも一度迷って、意を決してからじゃないと触れることができなかった。

でも本当は触れたくて触れたくてしかたない。次、会う時は触れてもいいだろうか…

Aのことに関しては臆病になる。柔らかい笑顔や、澄んだ声、穏やかな雰囲気、傍にいるだけであたたかな気持ちになれた。でもそれ故に俺なんかが触れていいんだろかっていう思いもある。自分のすべてを受け入れてほしいくせに、こんな闇を持った俺を綺麗なAに曝け出すのが怖い。

きっとAはすべてを受け入れてくれる気がするけど、もし拒絶されたら？そんな恐怖もあって一歩踏み出せないでいた。でも次会う時は踏み出してみてもいいかもしれない…なんて思ったりもする。

恐怖に負けなければ。


.

＃20→←＃18

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す