絡み付いて離れない【鬼滅の刃】 (ページ6)

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肆ページ6

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「Aは記憶喪失なんですよ」

しのぶの言葉に炭治郎はこの悲しみの匂いはA自身理解できていないと悟る。
鬼と人間が共同に暮らしている事実が自分達以外にも存在していた事に炭治郎は何処か安堵するが、
やっぱり例の匂いのことが気になった。

「A、彼は竈門炭治郎くん。
　鬼殺隊で妹が鬼なんですよ」

「……おに」

同じくしのぶに炭治郎を紹介されたAは妹が鬼だということに驚く。
Aは自分が誰だか分からないため、無表情の下で無意識に不安を募らせていた。
Aという名前も、目が覚めて頭に浮かんだのがその単語だけだったからだ。逆を言えばそれ以外Aの脳みそには何も残っていなかった。

自分という不完全で未知な状態にAは怯えていた。刀を握り鬼の首を斬る度に、自分の存在に混乱してしまう。
いつか自分の事を知っている人に会いたかったAは、自分と似た境遇の鬼がいることに安堵した。

「ところで竈門くんはどうしてここに？
　随分と焦っている様子でしたけど…」

「それは…匂いが、して」

しのぶは炭治郎の言葉に引っ掛かり、「なんの？」
と問いかける。
そういえば炭治郎は鼻が効くんだったか、としのぶは頭の隅で思い出した。

炭治郎は思案した。
もしAに呪いがあったら鬼舞辻無惨の名前を出してしまい酷い動揺を示すかもしれない。
そのまま記憶を呼び起こし、この場で暴れてしまうのは不味いと。

と、その時。
Aの鎹烏が窓の縁に止まり「西へ行ケ！！小鬼ガ出ルト情報アリ！！」という声が部屋に響いた。

炭治郎がタイミングが良かったとAに目線を戻した時もう既にそこにはAは居なかった。

＊

「竈門くんAから何の匂いがしましたか？」

しのぶはいつになく真剣な顔で炭治郎の回答を待つ。
先程の溜めとは売って変わって、炭治郎はAがこの場にいないことを確認して口を開いた。

「Aさんから奴…鬼舞辻無惨の匂いがしました」

「！」

しのぶは炭治郎の想像以上な回答に目を見開く。
鬼舞辻無惨は産屋敷が必死になって追っている厄災。

そんな人物の匂いがAからするという事に
しのぶは驚いてしまった。

「でも、ほんの少しだけです。悲しみの匂いと混じりながら鬼舞辻無惨の匂いが絡み付いてるみたいで、」

まるで"離さない"と言ってるように。