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「あ…」
「ヌナ？」
いつものように仕事終わり、Aと食事をして帰るタクシーの中。Aが携帯を見て、固まっているのにテヒョンは気付いた。
「どうしたの？」
テヒョンの言葉には答えないで、Aは落ち着きなく携帯を操作する。
「Aヌナ」
そんなAに不安になり、テヒョンは携帯を覗き込む。そこには彼氏からのメッセージが表示されており、Aはそれに返信しようとしていた。そのメッセージは「Aの家にいる」というものだった。
「ヌナ…彼氏、合鍵持ってるの？」
「ううん…ユンギが持ってるし、鉢合わせるのは嫌だったから渡してないの」
やっぱり彼氏より兄のが優先なんだ…なんてテヒョンは思いながらも「どうするの？」とAに問いかける。
「まだ戻れないから、
今日は帰ってって送るつもり…」
そう言ってAはそのようにメッセージを送信する。するとすぐに既読がついて、着信がくる。それにAは意を決して出る。
「もしもし…」
相手の声はよく聞こえないが、なにか怒鳴っているようなのはテヒョンも分かった。とてもじゃないけど、相手は冷静じゃない。戸惑いながらAは断りを入れている。
「運転手さん、行先変更してもいいですか？」
Aが話しているのを見ながらテヒョンはタクシーの運転手にそう問いかける。Aは電話しながら驚いた顔をしてテヒョンを見る。
しかしテヒョンはそんなAに笑いかけるだけで、何も言わなかった。
運転手に伝えた住所は宿舎のものだった。Aもそれが分かり慌てるが、まだ電話が終わっていないので止めることはできなかった。そのままタクシーは左に逸れ、行先を変更した。
「テヒョン…」
ようやく電話を終えたAが申し訳なさそうに口を開く。
「今から宿舎に向かえば、12時過ぎるし…ヒョン達には遅くなったから連れて来ちゃったって言うよ」
「でも…」
「あーでもヌナが寝るところないかな。みんな同じ部屋で寝てるんだよね。ユンギヒョン怒るかな」
「いいよ。ネットカフェかどこかに行くから」
「女の子がそんなところに行っちゃだめだよ」
テヒョンがそっとAの手を握る。Aは温かいテヒョンの手に包まれて、すさんでいた心が落ち着くような気がした。テヒョンの優しがAの思考力を鈍らせる。
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作者名：藍
| 作成日時：2018年11月15日 20時
