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どのくらいAを抱きしめていただろう。
雷の音が僕を現実へと引き戻した。
もうすっかり冷たくなってしまったAの髪を撫でる。
雨は止むどころかどんどんと強まっていくばかり。
「そう言えば、明日は雨かなってA言ってたよね。」
返ってくるはずのない君の声を求めて何度も何度も話しかける。
「っ、今日は雨だよ、僕たちが初めて会ったあの日と同じ.....」
8年間のAと過ごした思い出が走馬灯のように頭の中で駆け巡る。
あの日、あの暑い夏の日、雨の降る日に君と出逢い雨の降る8年後の今日、君とさよならをした。
「神様は意地悪だ.....っ、なんでAを連れて行っちゃうの.....」
そのときだった、カサッとポケットから何かが落ちた。
「っ、そうだ.....」
雨で所々濡れてしまったAからの手紙だった。
最初で最後のAからの手紙。
震える手でなんとか便箋を取り出す。
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大好きな、ジミンへ
これを読んでる頃にはきっと私はもうこの世には居ないから、私の想いを全てこの手紙へ書きます。
8年前の今日、私たちは出逢ったね。
いつも独りでいた私の人生を変えてくれたのがジミンだった。
優しくて、自分より他人を優先して、いつも私の味方でいてくれてありがとう。
貴方が私の初恋だったんだ。
あの日、私が一緒に逃げて、なんて言ったからジミンを苦しませちゃったね。
最後の最後まで迷惑をかけてごめんね、本当はジミンと一緒になりたかった。
5年後も、10年後も隣で笑っていて欲しかった。
でも、ジミンを苦しめた私はもう貴方の隣に居られないから。
私のせいでジミンの人生を狂わせたくない。
だから、私たちの関係も今日で終わりにしよう?
何も言わず勝手にこんな事をしてごめんね、私の分まで幸せになって。
さようなら。大好きだよ、ジミン。
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「っ、Aが居ないと幸せになれないよ.....なんで何にも言わないで勝手に一人で逝っちゃうの...狡いよ......」
便箋の他にもう一枚、写真らしき物が入ってた。
「こ、、れって、、、」
それは、お腹の中の写真だった。
小さく写ってる赤ちゃんの姿。
「うそだ....うそだろ...」
僕はAだけじゃなく、小さなもう一つの命までも奪ってしまったんだ。
言葉にならない悔しさが僕を襲った。
「必ず、ホテルに来てくれるって、言ってたじゃんか.....ねぇ、A.....」
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作者名:ちょんうさ | 作成日時:2017年8月19日 14時