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ゆっくりと身体を抱き寄せられて、力が入らないわたしは彼に寄りかかる形になってしまった。そのまま彼は口付けを繰り返しながら、部屋の中へと向かった。リップ音が響きながら、わたしは夢中になって彼から与えられるものに応える。いつのまにか身体はベッドに横たわっていた。
「続き、してほしい……?」
きっと物欲しそうな顔をしているのだろう。薄く笑いながら、焦らすようにわたしの首筋に触れた。羞恥心と葛藤しながら「欲しい」という言葉が漏れ出そうになった時。静かな空間に場違いな音が響いた。
「ふっ……このタイミング?欲しかったのは食べ物ってこと?」
肩を震わせて笑う彼に、先程とは違う恥ずかしさがわたしを襲う。まさか、こんなタイミングでお腹の虫が鳴るなんて。信じられない。
「なに、夜足りなかったわけ?」
「……っ、なにも、たべてなくて……」
あまりにも彼が笑うから、消えてなくなりたかった。顔を背けながら答えれば、彼は曖昧に返事をして上体を起こした。
「打ち上げいなかったから、とっくに食べ終わってるのかと思ってたけど」
「疲れてて……そのまま寝ちゃったの」
「ふーん、じゃあルームサービスでも取る?」
「え……?」
「初日に食べたけど、結構美味かったよ」
先程までの色香たっぷりの姿は消えてなくなり、機嫌良さげにメニューをぺらぺらと見始めた。それに驚きながらも、ゆっくりと身体を起こして彼の方を向く。
「あ、の……ルームサービスなんて頼んでもお金が……」
「いいよ、俺の部屋につけておけば」
「でも、」
「酒ばっかりで、料理少なかったから俺まだ食べれるんだよね〜適当に頼むから」
困惑するわたしを他所に彼はフロントに電話をかけて、次々と注文してしまった。そんなに頼むの?というほど、ぽんぽんとメニューを読み上げていくから怖くてしょうがない。
頼み終わったのか、どさりとベッドに腰掛けた彼はそのまま携帯をいじり始めた。
「thirty minutesって言ってたと思うから、30分くらいでくるんじゃない?」
「あ、うん……」
無駄に素晴らしい発音で言われて頷く。よく考えれば相手は外国人なわけで。対面して話すならまだ意思疎通が取りやすいが、電話口なんて相手の顔が見えなくて難しいのに。難なくやってのけてしまった彼に感心する。
その国の言語で伝えたいという思いが強く、勉強していることを知っている。そういうところがまたいいなって思って、気持ちが募った。
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藍(プロフ) - Agust dさん» あわわ!むしろお勉強のお邪魔をしていませんか?気分転換になったのならいいのですが。わたしはいつも素敵なお言葉に励まされております。本当にありがとうございます! (2019年12月3日 1時) (レス) id: 7c0b28e720 (このIDを非表示/違反報告)
Agust d(プロフ) - 私現在、試験期間中なのですが疲れたときにちょうど更新通知が来ていて「藍さんッッ!!!!」ってなりました (2019年12月1日 12時) (レス) id: fea73733b9 (このIDを非表示/違反報告)
藍(プロフ) - exol0725puさん» ゆんぎさんはいつもさらっと核心ついたり、周りを冷静に見ているイメージなので…格好良くしてしまいがちです笑 コメントありがとうございました! (2019年12月1日 10時) (レス) id: 7c0b28e720 (このIDを非表示/違反報告)
藍(プロフ) - babe305901さん» わーありがとうございます!嬉しいです。これからも素敵なジョングクをお届け出来るように頑張りますね。 (2019年12月1日 10時) (レス) id: 7c0b28e720 (このIDを非表示/違反報告)
exol0725pu(プロフ) - ユンギさんめっちゃかっこいい( (2019年11月30日 11時) (レス) id: 0e1f656f1e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藍 | 作成日時:2019年11月10日 9時