017 ページ17
.
「Aヌナは昨日、何も言わずにメイクしてくれましたよ」
「もう、Aは優しいから。それに甘えないの」
わたしのことなんてお構いなしに、2人は会話を続けていて。手が止まっていることに気付いた彼が「Aヌナ？」なんてわざとらしく聞いてきて息が詰まった。
彼は分かってやってるんだ。わたしが彼と目が合わせられないのも。だから何も言わないのも。オンニには見えない位置で怪しく笑う彼を見て確信した。それが分かってしまえば余計に彼と目なんて合わせられなくて、震えそうになる手をなんとか抑えて必死に彼のメイクを施した。
「…Aはジョングクのメイクは薄づきなのね」
一通りメイクを終えて髪を整えようとヘアスプレーを取ろうとしていたら、顎に手を当てながらオンニがそう呟いて、思わず顔を上げる。鏡越しに彼の顔を見れば目が合いそうになって、咄嗟にそらしてしまった。
「そう…ですか？」
「別にAのセンスだし、悪くはないからいいけれど。自分とは違うから面白くて」
そう言われてもう一度ちらりと彼の顔を見る。
最近は彼の顔をしっかりと見てこなかったから。見るとしたらアイドルの彼ではなくて、雄々しい妖艶な彼だったから。そしてそういう時は大抵メイクなんてしないし、そのイメージでメイクを施したのかな。わたしは彼の綺麗な顔が好きで、メイクを乗せるのも恐れ多いぐらいだから。それで薄づきになるのかもしれない。
無意識の行動というか、本能的なものなのか分からないけれど。メイクひとつとっても彼に対してはいつも通りにいかなくて、惑わされて戸惑ってしまう。わたしはどれだけ彼に狂わされればいいんだろうか。
彼が鏡越しにわたしを見ているのは分かっていたけれど気付かないふりをして、そのまま彼の髪に触れた。その時にふわりと香ってきた匂いにまたはっとする。今日は昨日と匂いが違う。
それは当たり前か。昨日、彼はわたしの家に来ていない。毎日来るわけでないから、彼はちゃんと宿舎でシャワーを浴びたのだろう。
もしかしたらわたし以外にもそういう女の人がいるのかもしれないけれど…彼は自分の裏の顔を隠しているみたいだし、多分いないと思う。
今日はオンニがすぐ横にいるから、彼とわたしの匂いが一緒にならなくて良かった。そう思ってスタイリングして、ヘアスプレーを吹き付けた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2161人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「BTS」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
藍(プロフ) - Agust dさん» いえいえ正常です笑 わたしも書きながらグクが来たら何させようとずっと考えていました。その結果が今回のお話です。いつもより濃厚にお届けしました！夜中しか更新できなくて申し訳ないですが、お目覚めのお供にどうぞお楽しみください。 (2019年11月8日 0時) (
レス) id: 7c0b28e720 (このIDを非表示/違反報告)
Agust d(プロフ) - 夢主の部屋に早くグクが来てなにかが起きて欲しいと楽しみに心待してしまう私は、すこし変態でしょうか？ 夜遅くに更新お疲れ様です 朝起きて通知見た瞬間パッチリ目が覚めました これからもファイティンです♪ (2019年11月6日 17時) (レス) id: fea73733b9 (このIDを非表示/違反報告)
藍(プロフ) - kokoboboさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます！他のお話も読んで下さって嬉しいです。今までのグクのお話とは違いますが、わたしもダークな一面が好きなので喜んで貰えて良かったです。のんびり更新ですが、最後までお付き合い頂ければと思います！ (2019年11月6日 0時) (レス) id: 7c0b28e720 (このIDを非表示/違反報告)
kokobobo(プロフ) - 素敵な作品読ませていただいてます！以前からお話は読ませていただいていたんですが、ついにグクの闇？版が出てもう本当に嬉しかったです！もうグクのこのちょっとダークな感じが...控えめに言っても最高で... これからも頑張ってください！ありがとうございました！ (2019年10月31日 19時) (レス) id: 4b3068ef63 (このIDを非表示/違反報告)
藍(プロフ) - あずささん» 嬉しいお言葉ありがとうございます！まだまだお互い一方通行ですが…わたしも早く2人の甘いお話を書きたいですのでお待ち下さいませ。 (2019年10月25日 1時) (レス) id: 7c0b28e720 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：藍
| 作成日時：2019年7月25日 15時
