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「申し訳ありません。原因は分かりません。Aさんは以前、交通事故で入院されていたんですよね?その時に脳外科や神経外科にお世話になったとか。そちらの分野の先生に調べてもらった方がいいかもしれません」
なんだよ、それ。それが分かってるなら最初からそっちで調べればいいだろ。何も異常がないなんて、そんなばかなことあるわけないじゃないか。
「今から調べてもらうことはできないんですか?」
納得できなくていらいらする僕の代わりにホソギヒョンが静かに問いかける。それにも医者は謝るだけだった。
「いくら意識がない状態といえ、既にたくさんの検査を受けています。これ以上はAさんの負担になるかと思いますので、明日の方がいいと判断させて頂きました」
「明日、調べてくれるんですね?」
「はい。今日の検査では何もわかりませんでした。もっと深刻な、あるいは発見するのが難しい分野になるかと思います」
淡々と話す医者の話をうまく脳が受け付けなかった。
「目を覚まさないということにもなにか原因があるかと思います。申し訳ありませんが、今日の検査では何も異常が見つからなかったので分かりません」
再び謝られても僕は何も言えなくて。代わりにホソギヒョンが答えて、明日の検査時間や結果が出る時間を聞いていた。
「ジョングク…Aちゃんの顔見てから帰るだろ?」
先生と別れても暫く茫然としていた僕の腕を引っ張るホソギヒョン。いつのまにAが寝ている病室を教えてもらったんだろう。本当に最後の方は話を聞いていなかった。
「…目を開けないAを見たら泣いちゃうかもしれません」
「いいよ。俺しかいないから。好きなだけ泣けばいい」
そう言ってまた僕の背中をさする。ホソギヒョンに連れられて病室に入れば、ベッドに静かに寝ているAの姿がすぐに目に入って。相変わらず固く目は閉じられていて、少し顔色も悪い気がする。そっとAの頬を撫でる。それでも何も反応はない。
「A…」
ねえ何があったの。どうして倒れたの。なんで目を覚まさないの。
聞きたいことはいっぱいあったけど何も口から出て来なくて。ただ名前を何度も呟くことしかできなかった。そんな僕の後ろに立って視界に入らないようにしてくれるホソギヒョンに感謝する。でも相変わらず背中はさすってくれていて、1人じゃないって思えて少し安心する。
「っ、A……」
名前を口にするたびに、涙が頬を伝った。
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セナ - まさかの記憶喪失だったという展開にとても驚かされました...!!!次回作も楽しみにしております(*^^*) (2021年8月11日 12時) (レス) id: 1946a1a89c (このIDを非表示/違反報告)
藍(プロフ) - ゆうりさん» ありがとうございます!こちらこそ嬉しいお言葉を頂けて感謝でいっぱいです。ぜひぜひ、次回作もお付き合い頂けたらと思います。 (2019年2月27日 19時) (レス) id: 66eaabbd56 (このIDを非表示/違反報告)
藍(プロフ) - みきさん» コメントありがとうございます!毎回みき様の素敵なお言葉に癒されておりました。タイトル通りひたすら優しさを漂わせていたお話だったのでそう言っていただけて嬉しいです。もし機会があれば書いてみたいと思います。 (2019年2月27日 19時) (レス) id: 66eaabbd56 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうり(プロフ) - 完結お疲れ様でした!!!とても好みの話でいつも楽しみに待っていました!次回作も時間がありましたら待っていますのでどうぞよろしくお願いしますm(__)m最後まで楽しませてくださってありがとうございました! (2019年2月25日 14時) (レス) id: 5e5d1321e9 (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - 完結お疲れ様でした。悪い人がいないとてもしあわせな話でした。この2人のしあわせな姿をずっと読み続けたいし、事故に遭う前の2人のしあわせな話も読んでみたいです。いつも更新楽しみにしていました。ありがとうございました。 (2019年2月25日 12時) (レス) id: cd9810eca3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藍 | 作成日時:2019年2月20日 20時