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「やっぱりこの辺りは人多いね」
「あ、うん…」
行き交う人を縫うように歩くジョングクさんに連れられながら必死に歩く。その間もジョングクさんは何か話していたけどわたしは繋がれた右手が気になって全く集中できなかった。
初めて触れたジョングクさんの手は大きくてわたしの手をすっぽりと覆ってしまっていて。そのサイズの違いにまたどきどきする。どうしよう。冷えていた筈の手が緊張で汗ばんだりしたら。
「あ!ちょっとあそこ寄っていい?」
「う、うん」
横でわたしがこんなどきどきしているなんて知りもしないジョングクさんはいつも通りで。彼の行きたいお店へそのまま連れて行かれる。
お店に入っても繋がれた手はそのままで。誰もわたし達のことなんて気にしていないと思うのにみんなに見られてるんじゃないかって思えるぐらいその手がわたしは気になった。
結局、そこでジョングクさんが品物を見ている間ずっと手は繋いでいて。またお店を出てぷらぷらと歩いている間もその手が離れることはなかった。
良かったのかなって思うけど自分から離すことはできなくて。でも緊張し続けていたから早く手を離してしまえばよかったのに行動に移すことはなかった。
「ヌナのもの全然買ってないけど」
「わたしは大丈夫」
「なんで?欲しいものないの?」
「そうですね」
こうやってぷらぷらするだけでも十分だし。ジョングクさんが欲しいものを買えたならそれでいいと思う。
「僕と居ても楽しくなかった?」
「え?」
悲しそうな顔して言ってくるから驚いて思わず立ち止まってしまった。それに合わせてジョングクさんも足を止めて悲しそうな顔そのままでじっとわたしを見てくる。
「僕ばっかりしたいことしてるから」
「そんなことないですよ!本当にわたしのことは気にしないで下さい。もともと物欲そんなにないんです。必要にかられないと買わないから…」
慌てて否定すれば悲しそうな顔はなくなったがでもまだ納得していない顔をしていた。
「でも食べたい物とか言わないし…ヌナはいつもそうやって自分を後回しにして人のことばかり」
「そ、そんなことは…」
「あるでしょ!遠慮しないで。欲しいものないわけじゃないでしょ?あ、何か食べる?」
相変わらず素敵な笑顔でそうやって聞いてくれるジョングクさんに嬉しくなる。その優しがいつも不思議で仕方ないのだけれど。
でも今だけはその優しさに甘えてもいいかなって思った。
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Yuki - ありがとうございます!では、遠慮なく、、、。本当に藍さんの作品に出合えてよかったです!無理せず更新頑張ってください!!! (2019年1月30日 23時) (レス) id: 5ccac3abe1 (このIDを非表示/違反報告)
藍(プロフ) - Yukiさん» いつもいつもyukiさまの温かいコメントにほっこりしていますので。いくらでもコメントして下さい!嬉しいので有難いです。もうすぐ1章終わりますので引き続きお楽しみください! (2019年1月30日 19時) (レス) id: 7c0b28e720 (このIDを非表示/違反報告)
藍(プロフ) - みきさん» コメントありがとうございます。こちらまで読んで頂いて嬉しいです。もしかして、もしかしてです。もうすぐ明らかになりますのでお待ちくださいね。 (2019年1月30日 19時) (レス) id: 7c0b28e720 (このIDを非表示/違反報告)
Yuki - いえいえ!逆に、コメントしすぎちゃうとダメかなって思って、でも藍さんとお話したくなっちゃって、、、笑笑 お言葉に甘えてこれからは毎日のように送っちゃってもいいですか!!!ウザかったら無視してくれちゃって大丈夫です!更新頑張ってください! (2019年1月29日 22時) (レス) id: 5ccac3abe1 (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - ずっとずっともしかして、と思っていましたが、ヒロインヌナ記憶がないですよね?でもふとした瞬間に体が動いてますね…そろそろ涙が止まらなくなってきました (2019年1月28日 23時) (レス) id: cd9810eca3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藍 | 作成日時:2019年1月20日 1時