51.花浜匙(unchangeable feelings) ページ1
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目が覚めたら、ナムはもう居なかった。
でも、さっきまでわたしの横に居たことが分かるのは、狭いシングルベッドの端に寄って空いたスペースがまた暖かかったから。
結局わたしはナムを拒否することはできなくて。優しくしてくれるというナムに甘えてしまった。
特に手を出されたわけでもなく、ナムとの間になにかあったわけではなかったけれど。でもホソクとの行為後の虚しさに比べて、優しくしてくれるナムは暖かくて。本当にわたしが寝るまで横で寝かしつけてくれたのだ。
「はあ……」
重い溜息を吐き出して、ベッドから出る。
このまま先が見えないホソクのことを諦めて、ナムと寄りを戻した方が幸せになれるんじゃないか……なんてそんな自分勝手な考えが頭を過る。
だってナムはわたしを甘やかしたいって、ずっと優しくありたいって言ってくれた。本当は付き合っている時に言って欲しかったけれど。
でも、今度こそわたしを1番に考えてくれるなら、特別のままでいさせてくれるなら、それでも……
でもそこまで考えて思い浮かぶのはホソクの顔で。綺麗な笑顔でわたしの名を呼ぶ彼の姿だったり、ホソクが欲しくて強請るわたしを笑う妖艶な彼だったり。
そしてやっぱりそんな姿を思い出して、会いたくなっちゃうし、好きだって思っちゃう。
もうナムには向けることのない感情がホソクには抱いていて。日に日に強くなっている気がする。それでもきっと、わたしはだんだん報われない想いに嫌になってきているんだと思う。
ホソクの考えていることが分からない。でも、わたしのこの感情は増すばかり。
ホソクが欲しいと思う。愛し合いたい。そんなわたしを嘲笑うかのように、ホソクはわたしを抱いてくれる。でも終われば虚しくなるだけ。それの繰り返しだけ。
どうにか今の状況を打破することはできないんだろうか。
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「お昼、学食でいい?」
「うん、いいよ」
午前講義が終わって、友人がそう声を掛けてきたので頷く。
あれからナムとは偶然会うことはなく、とりあえずは平穏を保たれている。優柔不断で流されやすいわたしは、またナムと出会ってしまったら甘えてしまいそうで怖かった。
一度でもナムと寄りを戻してもいいんじゃないかって思ってしまったわけだし、このままわたしの気持ちが固まるまで出会いたくなかった。
その一方でホソクとは曖昧な関係が続いている。大学内では殆ど会わなくて、カトクで連絡がきてホソクの家に行く流れが常だった。
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藍(プロフ) - aoi****007さん» コメントありがとうございます!確かにお互い敵意むき出しでしたもんね…くさずぺんの方には申し訳ないことをしました。同じ人を好きになった同士なのでそのうち仲良くなってることを祈ります笑 (2020年5月17日 9時) (レス) id: 7c0b28e720 (このIDを非表示/違反報告)
aoi****007 - クサズペンなので、喧嘩(?)してるところが、凄く複雑な気持ちだったけど 凄く面白かったです! (2020年5月16日 13時) (レス) id: 3e8c59420d (このIDを非表示/違反報告)
藍(プロフ) - 六花さん» 初めまして!ホソクペンの方にそう言って頂けてとても嬉しいです。長編ホソクさんは初めてだったので不安もありまして。わたしの大好きな色気だだ漏れホソクさんを感じ取れたということでしょうか?ありがたいです!懲りずにまたホソクのお話書ければなと思います! (2020年5月15日 0時) (レス) id: 7c0b28e720 (このIDを非表示/違反報告)
六花(プロフ) - ナムさんとの三角関係も拗れてもどかしくてもう胸がぎゅんぎゅんしました。素敵な作品をありがとうございました。長文失礼致しました。更新お疲れ様でした…! (2020年5月13日 15時) (レス) id: c1142a0fe4 (このIDを非表示/違反報告)
六花(プロフ) - 初めまして。完結おめでとうございます!いつも小説楽しませて頂いております。当方ホソクペンなのですが、不意に出るホソクさんの色気が藍さんの小説でめちゃくちゃに昇華されていて魅力が詰まりすぎていました…! (2020年5月13日 15時) (レス) id: c1142a0fe4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藍 | 作成日時:2020年5月2日 12時