19.牛蒡(touch me not) ページ19
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心の準備なんてできてなかった。
突然現れたホソクに何も言えなくて。でも昨日まではどきどきしたホソクの香りが、今は妙に鼻について。そっとホソクに掴まれた手を自分から放した。
「ごめん。講義終わってぼーっとしてた」
「まさか鍵忘れたとかないよな？」
ホソクはわたしの態度は気にならなかったみたいで、笑いながらわたしの顔を覗き込んできた。
ああ、そっか鍵忘れてきたっていうのでも良かったのか……いや、それは駄目だと、自分の考えを否定する。そんなことは流石に失礼過ぎる。
「はい、ちゃんと戸締りしてきたよ。ごめんね、勝手に使わせてもらって」
「いいって。俺が誘ったんだし」
「うん……」
もう鍵も返したから、すぐにでもホソクから離れたかった。
やっぱり彼の顔を見ると駄目だ。いつものように微笑まれるとまた気持ちが溢れてしまう。
「じゃあわたし、今日は用事があるから帰るね」
まだ何か話そうとしたホソクの言葉を遮り、そう言って素早く踵を返す。ホソクの顔を見ていたら駄目だ。
「あ、A」
小さくわたしの名を呼んだホソクの声に気付いてはいたけれど、聞こえなかったフリをして振り返ることはしなかった。
そのまま早足で駅まで向かう。
「わ、っ……！」
「悪い、大丈夫か？」
無心になって、今にも走り出しそうな勢いで歩いていたら、ちょうど曲がってきた人に勢いよくぶつかってしまった。
でも大して衝撃を受けず、むしろ暖かさに包まれて不思議に思う。
「あれ、A？」
「え……？」
どうやらぶつかってしまった人にわたしは抱き止められたみたいで。驚きながら顔を上げれば、相手がわたしの名を呼ぶからまた驚く。
でもその声はよく知るものだった。
「ナム……」
ぽつりと漏れた言葉は彼にはしっかり届いたようで、ふんわりと笑ってわたしの頭を撫でた。
「飛び込んできたのがAなんて。どこか行くのか？急いでたみたいだけど」
「あ、ううん。帰るだけ……ちょっと考え事してたの」
「この後何も用事がないなら、久しぶりにご飯でもどう？」
「……うん、そうだね。いいよ」
あんまり乗り気ではなかったけれど、でもホソクのことを頭から放したかったから。いつものようにわたしをリードしてくれる、ナムの手を掴んだ。
そんなわたしたちの後姿を追いかけてきたホソクが見ていたなんて、気付くこともなく。
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藍(プロフ) - マミさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます！楽しみに待っていて下さってありがとうございます！漸くここまできました！ちょっとややこしいことになってきましたが、ここからお話が動いてくるかと思いますのでお待ち頂ければと思います。マミ様もご自愛ください。 (2020年4月29日 19時) (
レス) id: 66eaabbd56 (このIDを非表示/違反報告)
マミ(プロフ) - いつも楽しく読ませて頂いてます！遂にホソク編でもう毎日更新を楽しみに待っています。これからホソクsideの話が出てくるのかもですがほんとにどうなるのか先が読めなくてハラハラしています。体調に気をつけて長く連載続けてください！応援してます！！ (2020年4月28日 12時) (レス) id: 53c4af20ee (このIDを非表示/違反報告)
藍(プロフ) - ナノカさん» 昔からなんて！！そんな嬉しいことあるんですね。感激しています。わたしなんかなんて言わないで下さい！本当に素敵な話で涙が止まりませんでしたよ。友達申請しようか迷ってました笑 今度勇気を出してお邪魔させて頂きますね！本当にコメント頂けて嬉しい限りです。 (2020年4月25日 10時) (レス) id: 66eaabbd56 (このIDを非表示/違反報告)
ナノカ(プロフ) - 藍さん» えええ！(T . T)今衝撃のあまり天を仰いでおります…昔から藍さんの作品が大好きでたくさん読ませて頂いてたのでそんな方に私なんかの作品を読んで頂いたなんてその事実だけで震えております（笑）うわああほんとに続き楽しみにしております！ (2020年4月24日 15時) (レス) id: 59d638975a (このIDを非表示/違反報告)
藍(プロフ) - ナノカさん» ナノカさま？！え、何度だって君をのナノカさまですか？？わたしあのお話凄い好きで、あんな素敵なお話を書く方のコメント頂けたなんて、今テンション爆上げです。大好きなんてそんな恐れ多いお言葉…ありがとうございます！めちゃくちゃ嬉しいです。わたしも大好きです (2020年4月24日 9時) (レス) id: 66eaabbd56 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：藍
| 作成日時：2020年4月16日 10時
