貴女しか要らない II

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「…ね、ジョングク」


「うん？」


「あたしと、ジョングクだけ」


「…」


「この世界に、いるみたいじゃない」


「…うん、確かに」


「……ここかなぁ」






ヌナの温もり。



俺より、頭ひとつぶん小さい

そんなヌナを、腕に抱いて 離さない。





コートにじんわりと染みる雪の冷たさ

耳を撫でる波音



…目を閉じて

また、開けて









「…ここ、かもね」










世界の果て。



俺と、ヌナだけの世界の

その最果て。








去年の冬は


貴女に反抗して 貴女の嫌がることを沢山したな


あれだけ嫌がってた煙草を、俺がヌナの前で吸い始めても

本格的に身体を鍛え始めたときも


俺が初めてタトゥーを入れた時も

女性と一緒にいるところが大々的に出ても



それでもヌナは、何も言わなかった。


…どんどん、俺を求める力が 痛烈になっていくだけで。



それが嫌で、でも、嫌とは言えなくて






“ヌナなんか居なくたって、生きていける”



“俺の人生を好きに出来るなんて、思わないでくれよ”



“俺は好きに生きていく”



“そこに、ヌナはいない”






……そんなこと、酔っ払って むきになって 叫んでも

ヌナは顔色一つ変えないで



…それが、彼女の精一杯の反抗だったんだ

今なら分かる。









“あんたなんか、大嫌い”











…そう、言われても


結局は離れられなかった。



離れようとしなかった。


俺も、ヌナも。



それが、全てなんだ。結局。












「…これから、どうする」


「うーん…」


「……あたし、ね」


「うん」


「ジョングクのこと、こんな風にしたかったわけじゃない」


「…」


「少なくとも… 防弾少年団が、名前を伸ばし始めた頃までは」





あなたの、歌う姿も 踊る姿も

バラエティーで一生懸命、頑張る姿も

アユクデで精一杯走って、無邪気に喜んでる姿とかも、ね


どんどん高い場所に登って

眩しくなってくあなたを


応援して、見守って

嬉しくて仕方がなかったんだ





ヌナが、そう ぽつりぽつりと話しながら

俺の胸にその頬を寄せる。









「…あたしの、くだらないわがままで」


「あなたをこんな風にさせちゃった」


「……抑えきれなかったの」


「こんなになって、初めて気付くなんてね」


「もっと早く、あなたを手離せたらよかったな」











ごめんなさい












…ヌナが、そう 俺に謝った。






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