貴女しか要らない II

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透き通るような雪景色


鼻の奥をつん、と刺激する 冬の香り




目の前に広がる、海は


地平線まで果てしなく広がっていく






太陽が降り注ぐ、暖かい日だ


冬空は 出会った日のように、青く澄み渡っていた。








繋いだ手は


温もりを伝え合う。





それが俺を支えてくれる。














「…綺麗だね」


「うん」


「…歩くの、疲れちゃった」


「休もうか？」


「うん」







その手を引いて、雪の積もった砂浜に下りる。






「わっ」






ヌナが足を滑らせて、俺の上に覆い被さる。


視界が、ヌナの拍子抜けした顔でいっぱいで

俺は思わず、笑ってしまった。



ヌナも、


子供みたいに笑った。








「おいでよ」







そう言って、俺の腕をぽんぽん、と叩く。


ヌナは俺の隣に寝っ転がって、

はあ、と大きく息を吐いた。



白い息が、青空に舞い上がる。



…空の向こうから、雪が ちらちらと
舞い落ちてくるのが見えた。








「…眩しい」


「いい天気だから、ね」


「雪、降ってきたよ」


「そうだね」


「…空しか見えない」


「うん」


「で、隣にはジョングク」


「…俺もヌナしか見えない」


「ふふっ、へんなの」




わざと、おどけて そんなことを言うと

ヌナは笑った。



ヌナを優しく抱き寄せる。



雪の冷たさが、肌にしみて

手袋をしていない手は、強くかじかんだ。







随分、遠いところまで来た。


何もかも捨てて

ヌナと、二人で。





この世の果てを探しに来たんだ。


もう、どれほど歩いたか 覚えていない。


そしてこの海まで、やって来た。





俺の胸に潜り込んだヌナが、そっと瞼を閉じる。









「…大きくなったね、体」


「…うん」


「ふふ、私への反抗でしょ。気付いてたんだから」


「…そうだったの？…ほんと、なんでも分かるんだ、ヌナは」


「分からないことだらけよ、この世界。でもね、ジョングクのことだけは分かる」









“あたしの好きなジョングクのままでいて”





…呪文みたいに、そう唱えては

目の前の俺を見つめようとしてくれないところも


優しさや愛情を、言葉にするのが下手くそなところも


愛してないふりを、するところも



俺とヌナは、やっぱり一緒だ。




そんなこと言ったら、きっと そっぽを向いてしまう


…そんな貴女の、些細なプライドも


今は、可愛いなと

微笑みながら、思うことができる。



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