番外編-2。 ページ38
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友達に会っても、
何してても、
スニョンのことが常にチラつく。
…こんなんじゃダメなのに。
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「だから〜ほんとに何も覚えてないんだって!」
『適当に嘘ついてレポート免れる気だろ!』
「俺そんな卑怯な嘘つかねえし!」
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次の授業に向かう為、廊下を歩いている時だった。聞き慣れた声が、大好きな声が、耳に入って心臓が大きく鳴った。
私の前方から、友達と数人で歩いてくるスニョンの姿が見えた。
…スニョンだ。私の知らない、私のことを知らないスニョンだ。
きっと私は声をかけることが出来ないまま、
スニョンの横を通り過ぎる。
スニョンは友達と笑いながら、
私は若干下を向きながら、
視界に入れず、
何事もなかったように。
だんだんスニョンの声が近づいてきて、
その足音はすーっと私の横を通り過ぎた。
…この現実を受け入れることは思っていた数倍難しい。私はまだ前に進むことができない。
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「…A、さん?」
涙が溢れそうになるのを堪えていたところ、
聞き慣れた声が私の名前を呼んだ気がした。
聞き間違えかと思って、
振り返ることはできなかった。
「…Aさん、ですよね?」
もう一度、そう言われた。
心臓の音がうるさくて、
振り返るのに少しだけ時間がかかった。
何が起きているのか、
きちんと理解していないまま、
私はスニョンと目を合わせる。
「…あ、やっぱり…!」
スニョンは笑った。
私を見て、あの大好きな笑顔を私に向けた。
『…なんで……?』
私の声は思っていたより小さくて、掠れていて、スニョンに聞こえたのかわからない。
「あぁ、えっと…その、いきなり声かけてすみません、しかも知らないやつに名前呼ばれたりしたらびっくりしますよね、えっと、」
スニョンは少し困ったように話すと、一緒にいた友達に先に行ってもらうよう伝え、私のそばに来た。
「…えっと、俺、最近Aさんによく似てる人見かけて、それで、なんていうか咄嗟に声をかけてしまったというか…その、びっくりさせてすみませんでした…」
スニョンは申し訳なさそうに少し頭を下げると、
そのまま私に背を向けた。
「……まって!!」
私はようやくカバンに入っているノートに手を伸ばした。
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ぽん - 初めまして◡̈⃝︎ホシを推していて、ホシが好きでこちらの小説を読んだのですが、感動しました。最後のシーン涙が出ました。沢山ある小説の中でこの作品が一番好きです!他の作品も読みたいです。ありがとうございました ; ; (2022年8月20日 15時) (レス) @page36 id: 33f90bf03f (このIDを非表示/違反報告)
じゅな(プロフ) - こんにちは。お久しぶりです^_^この物語に感動いたしましたものです。ストーリーと言い、なんといい、ほんとに作者様の才能がもう…(*´ω`*) 最後には感動して涙が出てしまいました。これからも応援してします!!頑張ってください^_^ (2020年12月26日 14時) (レス) id: c9ab294052 (このIDを非表示/違反報告)
ままむの盗賊 - させられました。私ももう1人の平行世界の自分がいるかなとか思ったり。面白かったです! (2020年12月10日 1時) (レス) id: 0c147f983f (このIDを非表示/違反報告)
ままむの盗賊 - 追加ですみません。一般大学生のホシくんはダンスを始めるきっかけになった。アイドルのホシくんはアイドルのホシとして生きていたら体験できないものを堪能できた。お互い入れ替わって大切なものを手に入れられたんですね...感動。パラレルワールドについて考え (2020年12月10日 1時) (レス) id: 0c147f983f (このIDを非表示/違反報告)
ままむの盗賊 - はじめまして!みなさん言ってるんですけど中々見ない設定で、タイトルに惹かれて読みました。書き方が上手であ〜と思う場面も多々あったり、感動したりとてもいい作品でした!読めて良かったです (2020年12月9日 19時) (レス) id: 16acb9df05 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いよ | 作成日時:2019年5月19日 22時