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「読んでみて、」
俺がそう言うと、Aは恐る恐るノートに手を伸ばし、ゆっくりとページをめくり始めた。
『…◯月◯日…、目が覚めると宿舎ではなく、実家にいた。誰も俺がSEVENTEENのホシであることに気がつかなかった。ここは俺がアイドルではなく、普通の大学生クォンスニョンとして生きている世界だった…気を失って倒れた俺は病院へ運ばれ、そこでAに出会った……ってこれ…』
「…うん、そのノートに書いてあるのは、俺がこの世界に来て起きたこと全て」
『◯月◯日、Aとご飯を食べた。その後ゲーセンに行ってプリクラを撮った。Aといるとこの生活も悪くないかもってそんなことを思ってしまう…』
「あー、ちょっと恥ずかしい、やめて、もう読むの終わり!」
俺がAからノートを取り上げようとすると、その手ははらりとかわされた。
『◯月◯日、Aと…』
「ちょっと!もういいって!おわりおわり!」
『いいじゃん!もう少し読ませてよ!』
Aがあまりにも嬉しそうに笑うから、
もうどうでもよくなってしまった。
Aとはじめて会った時のこと。
たくさん一緒に色んなところへ出かけたこと。
一緒にSEVENTEENのライブに行ったこと。
Aが練習生だった時のことを話してくれたこと。
本当にずっと助けてもらったこと。
Aに出会えた心の底からよかったと思っていること。
全部全部、なくならないように。
消えないように。
俺の字で残しておきたかった。
.
「…満足した?」
あれから全部のページを見たであろうAの目にはうっすら涙が浮かんでいるように見えた。
『…うん、私のことがたくさん書いてあって嬉しかったよ、』
「…それなら、よかった…」
『…でも、これどうするの?』
「こっちの世界の俺に読んでもらうために書いた」
『…え…?』
「A、前に俺に言ったよな、今までの思い出全部忘れられることが怖いって。』
“ 明日会うスニョンは私のことなんて覚えてなくて、一緒に色んなところに行ったことも、ライブに行ったことも、私が話したことも、全部全部覚えてない。…それがものすごく怖いなあって思ったの、”
『………』
「…なかったことになんてしない。全部、この世界で俺とAが過ごした大切な時間だ。それをこの世界の俺にも知ってほしくて、」
『スニョン…』
「…それに、俺は絶対に忘れない、どの世界にいようが、俺は俺だから。」
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ぽん - 初めまして◡̈⃝︎ホシを推していて、ホシが好きでこちらの小説を読んだのですが、感動しました。最後のシーン涙が出ました。沢山ある小説の中でこの作品が一番好きです!他の作品も読みたいです。ありがとうございました ; ; (2022年8月20日 15時) (レス) @page36 id: 33f90bf03f (このIDを非表示/違反報告)
じゅな(プロフ) - こんにちは。お久しぶりです^_^この物語に感動いたしましたものです。ストーリーと言い、なんといい、ほんとに作者様の才能がもう…(*´ω`*) 最後には感動して涙が出てしまいました。これからも応援してします!!頑張ってください^_^ (2020年12月26日 14時) (レス) id: c9ab294052 (このIDを非表示/違反報告)
ままむの盗賊 - させられました。私ももう1人の平行世界の自分がいるかなとか思ったり。面白かったです! (2020年12月10日 1時) (レス) id: 0c147f983f (このIDを非表示/違反報告)
ままむの盗賊 - 追加ですみません。一般大学生のホシくんはダンスを始めるきっかけになった。アイドルのホシくんはアイドルのホシとして生きていたら体験できないものを堪能できた。お互い入れ替わって大切なものを手に入れられたんですね...感動。パラレルワールドについて考え (2020年12月10日 1時) (レス) id: 0c147f983f (このIDを非表示/違反報告)
ままむの盗賊 - はじめまして!みなさん言ってるんですけど中々見ない設定で、タイトルに惹かれて読みました。書き方が上手であ〜と思う場面も多々あったり、感動したりとてもいい作品でした!読めて良かったです (2020年12月9日 19時) (レス) id: 16acb9df05 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いよ | 作成日時:2019年5月19日 22時