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俺はこれからどうなるのだろうか、
元の世界に戻れるのだろうか。
戻れなかったらどうなるのか、
Aをこれ以上傷つけていいのだろうか。
悲しませていいのだろうか。
そんなことがずっと頭の中を占領していた。
わけがわからなくなって、
パンクしそうになった時、
心に突然降ってきた言葉。
“目の前にあるものを大切にします”
答えだと思った。
心にすとんと落ちたその言葉は、俺に新たな光をくれた。
自分が今、何をすればいいのか、わかった気がする。
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「……いない!どこいんだよ〜…」
Aに“しばらく会うのやめよう”と言われてから数日が経った。
連絡しても繋がらないし、
返信ももちろんこない。
大学でいくら探しても見つからないし、
…あいつは忍者かっ!
「くそ〜…絶対見つけてやる…」
Aに伝えたいことがある。もう二度とあんな悲しそうな顔をしなくて済むように。
俺がいなくなった後の世界でも笑っていられるように。
あの日、俺のことをAが助けてくれたように、今度は俺がAに大丈夫だって言ってあげたいんだ。
「………A…?」
大学の中庭で少し休憩していた時、
2階の通路を歩くAの横顔を見た。
慌てて猛ダッシュ。
俺Aの為に走りすぎじゃない?
前も悪質なナンパから助ける為に走ったよなあ。
そんなことを考えながらも、
見失わないように走る。
「Aっ!!」
やっとの思いで追いついて、後ろから叫んだ。
Aは少し驚いて、俺の姿を確認すると、
「あ!!こら!!逃げるなっ!!」
走って逃げた。
『しばらく!会わないって言ったでしょ!!』
周りいる人たちの視線も気にせず、
逃げ続ける背中を追う。
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『はぁ…はぁ…』
「現役アイドルの体力なめんな」
数分後、Aの手首を無事掴んだ俺は、
静かに話せる場所へ移動した。
「はい、水」
『…ありがと、』
授業が始まる前の講義室は、
人もいなく、とても静かだった。
広い講義室の隅、
ぐったりしているAに水を渡す。
「……しばらく会わないってやつ、無視してごめん」
『…………』
「…どうしてもAに伝えたいことがあって」
『…なに、これ…?』
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俺はAに一冊のノートを渡した。
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ぽん - 初めまして◡̈⃝︎ホシを推していて、ホシが好きでこちらの小説を読んだのですが、感動しました。最後のシーン涙が出ました。沢山ある小説の中でこの作品が一番好きです!他の作品も読みたいです。ありがとうございました ; ; (2022年8月20日 15時) (レス) @page36 id: 33f90bf03f (このIDを非表示/違反報告)
じゅな(プロフ) - こんにちは。お久しぶりです^_^この物語に感動いたしましたものです。ストーリーと言い、なんといい、ほんとに作者様の才能がもう…(*´ω`*) 最後には感動して涙が出てしまいました。これからも応援してします!!頑張ってください^_^ (2020年12月26日 14時) (レス) id: c9ab294052 (このIDを非表示/違反報告)
ままむの盗賊 - させられました。私ももう1人の平行世界の自分がいるかなとか思ったり。面白かったです! (2020年12月10日 1時) (レス) id: 0c147f983f (このIDを非表示/違反報告)
ままむの盗賊 - 追加ですみません。一般大学生のホシくんはダンスを始めるきっかけになった。アイドルのホシくんはアイドルのホシとして生きていたら体験できないものを堪能できた。お互い入れ替わって大切なものを手に入れられたんですね...感動。パラレルワールドについて考え (2020年12月10日 1時) (レス) id: 0c147f983f (このIDを非表示/違反報告)
ままむの盗賊 - はじめまして!みなさん言ってるんですけど中々見ない設定で、タイトルに惹かれて読みました。書き方が上手であ〜と思う場面も多々あったり、感動したりとてもいい作品でした!読めて良かったです (2020年12月9日 19時) (レス) id: 16acb9df05 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いよ | 作成日時:2019年5月19日 22時