21。 ページ21
.
.
.
練習生だった頃の私は、毎日デビューするために必死だった。
毎日毎日夜遅くまで練習して、
そして朝早く起きてまた練習。
そうしないとデビューできないから、
大好きなアイドルになれないから。
そんな毎日を送っていたら、テストの日はいつも良い評価をもらえるようになっていたし、周りからはデビュー確定なんて言われるようになっていた。
とても嬉しかった。
デビューを掴めるような気がして。
本当にあと一歩ってところで、ある日こんな噂が流れたの。
"次はAがソロでデビューする"
私はグループでのデビューを望んでいたから、この噂を聞いた時は正直そんなに喜べなかった。
でもデビューはデビューだし、
ソロでもなんでもできることならって、
私はそういう気持ちでいた。
……でも、そしたら突然、今まで一緒に練習を乗り越えてきた仲間たちが一斉に背を向けたの。
確かにソロでもグループでも事務所から新人がデビューすれば確実に次は何年か空く。
私がソロデビューしたら次は何年先になるかわからない。
そんな不安が仲間たちにはあったんだと思う。
誰からも話しかけられなくなって、
完全に孤立した。
どうせソロなんだから大丈夫でしょって、誰も私の相手をしてくれなくなった。
……それがたまらなく怖かった。昨日まで一緒に頑張ってきた仲間が一斉に離れていく感覚…誰に話しかけても反応してもらえない恐怖、まるで自分がどこにも存在していないみたいに。
最初は頑張って耐えてたけど、ある日突然ポキッと心が折れちゃった。
足が動かなくて、あの空間に足を踏み入れることが怖くなった。
……それで私は練習生を辞めたの。
…辞めてからわかったんだけど、私のソロデビューの噂は本当にただの噂で、そんなこと事務所の計画には一切なかったらしい。
…でも、今思えばそんなことで心が折れるくらいだから私にアイドルは向いてなかったんだなって、そう思ってる。
だから、スニョンが羨ましい。心の底からアイドルになることを望めたスニョンが。
私にはその覚悟がなかった。
…私は弱くて、なれなかったの、大好きなアイドルに。
927人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぽん - 初めまして◡̈⃝︎ホシを推していて、ホシが好きでこちらの小説を読んだのですが、感動しました。最後のシーン涙が出ました。沢山ある小説の中でこの作品が一番好きです!他の作品も読みたいです。ありがとうございました ; ; (2022年8月20日 15時) (レス) @page36 id: 33f90bf03f (このIDを非表示/違反報告)
じゅな(プロフ) - こんにちは。お久しぶりです^_^この物語に感動いたしましたものです。ストーリーと言い、なんといい、ほんとに作者様の才能がもう…(*´ω`*) 最後には感動して涙が出てしまいました。これからも応援してします!!頑張ってください^_^ (2020年12月26日 14時) (レス) id: c9ab294052 (このIDを非表示/違反報告)
ままむの盗賊 - させられました。私ももう1人の平行世界の自分がいるかなとか思ったり。面白かったです! (2020年12月10日 1時) (レス) id: 0c147f983f (このIDを非表示/違反報告)
ままむの盗賊 - 追加ですみません。一般大学生のホシくんはダンスを始めるきっかけになった。アイドルのホシくんはアイドルのホシとして生きていたら体験できないものを堪能できた。お互い入れ替わって大切なものを手に入れられたんですね...感動。パラレルワールドについて考え (2020年12月10日 1時) (レス) id: 0c147f983f (このIDを非表示/違反報告)
ままむの盗賊 - はじめまして!みなさん言ってるんですけど中々見ない設定で、タイトルに惹かれて読みました。書き方が上手であ〜と思う場面も多々あったり、感動したりとてもいい作品でした!読めて良かったです (2020年12月9日 19時) (レス) id: 16acb9df05 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:いよ | 作成日時:2019年5月19日 22時