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母さんは俺の記憶が戻るように、昔のアルバムやらビデオやらたくさん見せてくれた。
でも、記憶が戻ることはない。
絶対にない。
だって、アルバムやビデオに写ってる俺は、俺じゃないから。
「俺は昔からすげー飽き性だったらしい」
『へえー、そうなの?』
「だから昔から色んなスポーツやらせても全然続かなかったって」
今日も大学終わりにAと待ち合わせをして、遊びに出かけた。その時に母さんから聞いたこっちの俺について話すとAは興味深そうに聞いてきた。
「…本当に別人なんだね、」
『え?今更?もしかして信じてなかった?』
「そういうわけじゃないけど…なんか改めて名前も見た目も同じだけど、2人は全くの別人で、1人はアイドル、もう1人は普通の大学生、なんて…不思議だなあってしみじみ思っちゃって」
『…俺はまだその不思議な世界を受け入れられてない部分はあるけどね。未だに変な夢見てるとしか思えないし、12人のSEVENTEENに違和感しかない。夢なら早く醒めてほしいって毎日思ってる。』
…毎朝、宿舎に戻ってるんじゃないかって。
あのうるさい声たちに起こされるんじゃないかって。
『……あ、考えてもしょうがないことは、考えないって昨日Aに言われたばっかりだった!』
「ガッツリ考えてたね、」
『考えさせるようなこと言わないでよ』
「ごめん」
『あら、素直』
素直に謝るAをからかって笑っていると、
街中で一際賑わう場所を見つけた。
「なにあれ?」
『ストリートダンスやってるんじゃない?』
「あぁー、なるほど」
俺がその賑わうほうを指差すと、
Aがそう答えてくれた。
近づいて見てみると、人だかりの中心で軽快にダンスを踊っている若者の集団がいた。
職業柄か、こういうものは無意識に見てしまう。
「…あっ、ごめん、行こっか」
隣にAがいることを忘れて、
じーっと見てしまっていたことに気がついた。
『踊る?』
「え?」
『飛び入り参加もアリだよ』
「…いや、何言って、」
『現役アイドルの実力見せてよ』
「…はい?」
『パフォーマンスチームのリーダーなんでしょ』
「…え、なんでそれ、」
『なんとなく?最初に私に会った時、そこ気にしてたみたいだったから』
「…正解、ですけど、」
『じゃあダンスは得意だね!』
「え、ちょ、待っ…!!」
Aが俺の背中を思いっきり押したせいで、
俺はいきなり人混みの中心へ。
『はい!この人!踊ります!!』
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ぽん - 初めまして◡̈⃝︎ホシを推していて、ホシが好きでこちらの小説を読んだのですが、感動しました。最後のシーン涙が出ました。沢山ある小説の中でこの作品が一番好きです!他の作品も読みたいです。ありがとうございました ; ; (2022年8月20日 15時) (レス) @page36 id: 33f90bf03f (このIDを非表示/違反報告)
じゅな(プロフ) - こんにちは。お久しぶりです^_^この物語に感動いたしましたものです。ストーリーと言い、なんといい、ほんとに作者様の才能がもう…(*´ω`*) 最後には感動して涙が出てしまいました。これからも応援してします!!頑張ってください^_^ (2020年12月26日 14時) (レス) id: c9ab294052 (このIDを非表示/違反報告)
ままむの盗賊 - させられました。私ももう1人の平行世界の自分がいるかなとか思ったり。面白かったです! (2020年12月10日 1時) (レス) id: 0c147f983f (このIDを非表示/違反報告)
ままむの盗賊 - 追加ですみません。一般大学生のホシくんはダンスを始めるきっかけになった。アイドルのホシくんはアイドルのホシとして生きていたら体験できないものを堪能できた。お互い入れ替わって大切なものを手に入れられたんですね...感動。パラレルワールドについて考え (2020年12月10日 1時) (レス) id: 0c147f983f (このIDを非表示/違反報告)
ままむの盗賊 - はじめまして!みなさん言ってるんですけど中々見ない設定で、タイトルに惹かれて読みました。書き方が上手であ〜と思う場面も多々あったり、感動したりとてもいい作品でした!読めて良かったです (2020年12月9日 19時) (レス) id: 16acb9df05 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いよ | 作成日時:2019年5月19日 22時