さわやかな香りのデビル (ページ6)

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さすがに抵抗してるけど、
男の人の力に敵うわけがない。

それに、彼の体つきは一般男性より力があると思う。

「お前がすぐに着替えないのが悪い」

結局諦めて、彼に従うように着替えた。

肌触りが気持ちいい。
高級スーツはこんなにも違うのかと驚いた。

なんとなく彼の動きを見ていた。

ボタンを下から一つひとつとめていく。
第二ボタンで彼の手の動きがゆっくり止まった。

あのさ、彼とは思えない自信がない口調。

「また会える？」

「 ……え？」

「いや、ごめん。忘れて」

再びボタンをとめようした彼の手を両手で包み込んだ。

「会えます、また会いたいです」

今日で何度目のキスなのか分からない。

思いきり押しつけられ、彼の歯があたった。

｢いたっ｣と言葉を発したつもりが、
彼の口に閉じ込められ、するりと舌が侵入してくる。

苦しくなって、
胸板を押したけど離れようとしない。

私が倒れそうになるまで、
やめなかった彼の肺活量はどうなっていたのか。

高級スーツからは、さわやかな香りはしない。

どうして、女物のスーツがあるのか
訊きたかったけど、それについては黙ることにした。

私に拒否権なく、
車で私の会社付近まで送ってくれた。

別れ際、連絡先を交換することに。

「携帯貸して」

「どうぞ」

偶然、同じ機種だったため
彼は慣れた手つきで
操作をして連絡先を登録してくれている。

「じゃ、頑張って」

私に手をふってから、アクセルを踏んだ。

上司に怒られた次の日に遅刻。

激怒されるだろう。
それか呆れられて放置。

今の私にはどっちも耐えられる。
『じゃ、頑張って』彼のおかげで。