海よりも深く (ページ6)

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夕方になって、やっと本来の目的地へ向かうべく電車に乗り込んだ。
目的地がどこか知らないんだけれど。

「どこ行くか教えてよ」

「着いたらわかんだろ」

「そうだけど」

「いいとこだよ」

「適当なんだから…」

窓の外を見れば、街中からどんどん離れてっているのはわかる。
そりゃあ一応旅行なんだし、遠出なのは当たり前なんだけれど。

……なんか、覚えがあるような。

「ユンギ、もしかして」

ユンギは、さあ？とでもいうように首をかしげて、目を閉じた。寝るんですか。

人の少ない車内は静かで、電車の音が響いて、心地よい。
肩に感じるユンギの体温も、左の手の甲に伝わる熱も、この空間の何もかも。

やっぱり記憶が重なって、私の推測はきっと合っていると感じた。

あの日もこうやって、私の隣にいたのは、紛れもなくユンギで。
私とユンギは、まだ高校生だった。

「ユンギ、」

眠ってしまった彼の肩に凭れて、私も目を閉じる。
瞼の裏に浮かぶのは、私とユンギ以外誰も知らない、隠しておいた一番大切な思い出。

ユンギにとってあの出来事がどういうものなのか、未だに微塵もわからないけれど。
あの人の中にも、ちゃんと残っていたんだという事実だけで、十分だった。

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