海よりも深く (ページ5)

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「仕事平気だった？」

「すごい今更だね」

「まあ」

気を遣うタイミング間違えてる。
当日にそんなことを言われてもね。

「私の勤務態度いいから。即OKでした」

「おー流石。偉い偉い」

他愛ない話をしながら、特にどこへ行くでもなく。ユンギは人混み得意じゃないし、私もあまり好きじゃないから。こっちの方がいい。

「あ、待って。そこの店行こ」

「雑貨屋さん？」

引っ張られて連れてがれたのは、可愛い雰囲気の雑貨屋さん。
ユンギに少女趣味が出来たのかな…と訝ってると、ちげえからなと睨まれた。

これぞエスパー、ミンユンギ。

「あ、あった」

とあるコーナーの前に立ち止まったユンギは、ある商品を手にとって。
それを私の耳にあてがった。

「うん、やっぱ似合う。センスあるわ俺」

「え、なに…ピアス？」

「前見かけた時、Aに似合うと思って」

「…そう」

泣きたいくらいに、嬉しい。

買ってくるから待っててと、手を離してレジへと向かったユンギ。

嬉しくて、同じくらい胸が痛くて、泣き出しそうになる。いい歳して情けない。

あなたは私のことをどうしたいの。
これ以上好きにさせたって、ユンギは。

「はい」

「ありがとう…大事に、するね」

今つければ？と、渡してきたのにひょいとそれを取り上げて、私の耳にピアスをつける。

両方つけ終えたユンギは、満足そうに笑った。

「可愛い」

……ああもう、目眩がする。

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