海よりも深く (ページ21)

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その日から、仕事終わりによく会うようになった。ごはんを食べてお酒を飲んで、他愛のない会話をして。休日に出かけることも何度かあった。

時々絡められた指も、帰る時必ずするキスも、胸が潰れてしまいそうな程に幸せだったし、苦しかった。

ごく普通のカップルのようなことをしていた。
私は愛される資格のない女なのにね。

でもそれも、今回でおしまい。

「ユンギが旦那さんになるって、笑っちゃう」

「何それ、ムカつく」

「ごめんってば。怒らないで？」

優しいキスの後、場違いに明るい声でそう言えば、ユンギはムッと顔をしかめた。

彼はチェヨンさんと結婚する。それはもう再会した時から分かってたことだけど、来週籍を入れて式を挙げる。きっとこの旅行は、私たちの関係に終止符を打つためのもの。それ以外の何物でもない。

「チェヨンさん絶対綺麗だろうな～、あの子本当に可愛いしウェディングドレス似合いそう」

「まあ」

「式、楽しみにしてる」

と、言ったけれど。
本当は、結婚式に行かないつもりだ。

耐えられないとかそういうんじゃなくて、二人の幸せの間に介入した私みたいな存在が、二人の大切な日にのこのこ行くなんて、できない。

何も言わないユンギから視線を移して時計を見れば、もう日付が変わりそうで。ああ、終わっちゃう。痛いのか何なのかわからない胸を押さえて、悲しいとか寂しいとか苦しいとか、そういう感情を全て押し殺した。

「もう寝よっか」

「……」

「…幸せにしてあげてね、ユンギ」

今までごめんなさい。

そう小さく付け足して、私を射抜くような目で見つめるその視線から逃れるようにベッドへ向かえば、手首を掴まれて。

驚いて振り返れば、そのままぎゅっと抱き締められた。

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