海よりも深く (ページ14)

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お風呂から上がると、もう夜ごはんの準備が整えられていて。予想通りすごく美味しくて、文字通り頬が落ちそうで幸せだった。

「美味しかった…！」

「すげえ食べたな」

「美味しさのあまり、つい」

それは何より、と笑って、お風呂へ行ってしまったユンギ。

それからしばらくしてノックの音が聞こえて、扉を開けると従業員の方が。

「お皿お下げしますね」

「あ、ありがとうございます。手伝いますね」

「申し訳ございません。助かります」

「すごくすごく美味しかったです！」

「ふふ、ありがとうございます」

熱意をもって伝えると、嬉しそうに笑ってくれて、私も嬉しくなってしまう。

お皿を全てワゴンに乗せたところで、彼氏さんですか？と尋ねられた。あー、と言葉を濁していると、素敵な方ですねと微笑まれる。

「そうですか？」

「実は今日の夕食のメニュー、お客様が好きだからと、ご予約時に頼まれたものなんです」

「え……」

そういえば、私の好きな料理ばかりだった。
美味しさのあまり、ラッキーぐらいにしか思っていなかった。

「そうなんですか…」

「愛されているんですね」

「…ありがとう、ございます」

失礼しますと会釈したのにお辞儀を返して、パタンと扉を閉める。膝の力が抜けたみたいにずるずるしゃがみこむと、あの人が言った言葉が頭の中で反響した。

『愛されているんですね』

……そんなことあるわけないのに。

愛される資格は、ないもの。

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