すきなものの食べかた:34 ページ34
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それからというものの、
私たちは文字通り、友だちに戻った。
あんな気まずい状態でいるのは
耐えられないから、関係を友だちの先へと
進めるのではなく、友だちとして留まった。
二人で話して決めたことだ。
そもそも私が元に戻りたい、って切り出したわけだし。
これが私の望んだ結果で、
自分が傷ついたりしないためには
これでよかったはずなのに、治と話せず
モヤモヤしていた頃より私の心は不安定だった。
「 Aってさ、宮と仲ええよな 」
昼休みの時間、目の前の友だちが
売店で買ったパンを頬張りながら
突然そんなことを口にした。
『 ああ、侑? 』
「 いや、ちゃう、治の方 」
ああ、なんだ治の方か、と
納得するも、すぐさま感じた違和感。
最近部活以外じゃほとんど治と会話はしないのに、
一体何を見てそう思ったのか。
「 侑はあれやん、侑がAのこと気に入っとって、それをAがあしらっとる、みたいな。なんか二人の絡み漫才みたいやで 」
まあ言いたいことはわからないでもない、
漫才か、となんだかおかしくて笑ってしまった。
『 なんで治と仲良いと思うん? 』
「んー、なんかな、仲良いって言っても、侑のとは違う“仲良い”やねん 」
『 …何それ 』
にやりと意味ありげな笑みで私を見つめる、
この子の視線がなんだか懐かしかった
まだ私と治が普通に友だちでいたとき、
こういう眼で、侑と角名は私のことを見ていたのだ
好きなくせに、と私に吐かせるような、
なにもかも見透かしたような、半分冷やかしの入り混じった眼。
「 …まあ最近あんま学校で治くんと話しとるとこ見てないけど、男子に冷たいあのAが、治くんと話しとるときだけあんな表情筋緩ませて話しとったし、二人の雰囲気もいい感じやったから、なんなら付きおうてるんかと思ったわ 」
前に、侑にも同じようなことを言われた気がする。
侑の他にも、私のそういう変化に
気づいてる人がいたとは思わなかった。
「 どうなん、Aとしては 」
『 …友だちやで、ただの 』
好きだとは、言わなかった
もうどうにもならないのに、
その言葉を口にしてしまえば、ただただ
苦しくなるだけだから。
自分の気持ちにもっと早く気づいていれば、
過去のトラウマなんか気にせず彼にぶつかれる勇気があれば、今こんなことになってはいないのに。
廊下を、隣のクラスの彼が通った気がした
やっぱり私は、無意識に彼を目で追っていた
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うに - すすす素敵すぎてびっくりしました!最後までキュンキュンしながら読みました! (2021年8月5日 15時) (レス) id: aca41c32b2 (このIDを非表示/違反報告)
らんたん(プロフ) - こんなにキュンキュンしたのは久しぶりです!本当にありがとうございます。胸が苦しい… (2021年4月19日 11時) (レス) id: 1e7e266fc1 (このIDを非表示/違反報告)
あかね - 終盤泣きました。最高of最高をありがとうございます(真顔)。 (2021年1月16日 16時) (レス) id: f36e099441 (このIDを非表示/違反報告)
黎子(プロフ) - 初コメ失礼します!!終始キュンキュンしっぱなしでした、最高です!宮兄弟が好きな私にとって最高な作品でした!これからも頑張ってください! (2018年12月18日 0時) (レス) id: 1c7dde52b2 (このIDを非表示/違反報告)
鈕(プロフ) - つくねさん» ありがとうございます〜〜!!そういっていただけてとても嬉しいです;;;; (2018年11月16日 21時) (レス) id: 8b744c9e10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鈕 | 作成日時:2018年2月3日 17時