【本編】天下無双仮面武闘会 (ページ12)

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太陽が傾き、橙色をした空が澄みわたる頃。
闘士であろうが、あの道のりを攻略し終えた後の激戦を経ては、一日の疲れがどっと肩にのし掛かる時間であり、殆んどの闘士は旗亭レンリで身体を休めているところだった。

ゆったりとくつろげるのは部屋のみならず、解放感のあるロビーも憩いの場であった。
高級感のあるソファが並び、その最も角に位置する所に座った闘士の一人であるフィーシャンは、他の闘士の姿を探していた。片手間に、闘技場までの道すがら採集してきた草花や木の実などを分類しながら、時々目線を上げる。

そこに来たのは、人命に関わる医療方面に携わる共通点のあるラム、続いて先程発表されたトーナメントによるとフィーシャンの対戦相手であるペアの一人のヒメノが来た。二人は別々に座る。
特にラムは、ローテーブルに広げられた薬師の商売道具に視線をやって、フィーシャンの目の前に座ったのだった。

「こんにちは。同じ闘士だよね？俺はラム。職業は医者。その薬草たち、とても興味深いものだと思って……あなたも医療関係者？」

「へえ、医者ね。……俺はフィーシャン。薬売りやってます」

「どうりで。煎じたり挽いたりすれば薬になるものばかりだと思った」

「そうだ、あんたもうちの薬を贔屓にしてくれませんかね」

商売の機会というのは、そこかしこに転がっている。
その一瞬のチャンスを見逃さずに売り込むのが商売人の腕である。

「お兄さんらかっこええなぁ思っとったら、医療関係者なんか！器量良しの上に頭も良いなんて天は二物与えるんやなぁ」

薬を前にニコニコ笑顔を交わしていた二人に、特徴的な喋り方をするヒメノがひょっこりと現れた。いつの間にか座る場所をラムの隣に改めた彼は笑顔で続ける。

「あ、俺はヒメノや。普段は農業しててなぁ」

二人はその口調と声色に、あの初めにペアが決まった片方だったと思い出した。

「野菜なんかを育ててるんやけど。例えばレンズ豆なんかな。美味いんやで～！あ、それでな」

薬膳に使えるんやで、と一言。
育てているわけではないが野草が豊かに生えていて、薬になるだろう、と言い添える。

「飲食療法……なるほどね。それは俺も興味があるな」

「本当か。それは是非行ってみたいもんだ。野草の種類は？場所は？もっと聞かせてくれ」

「勿論や！」

商売上手は話し上手。
彼らは領する情報を共有しながら、世にも健康的な話の花を咲かせるのだった。