ステラ［YG］ (ページ29)

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８：楽園ページ29

TH side

貴方「カナリア……？」

「うん。」

貴方「私が？」

「そう。」

貴方「 ……申し訳ないんですけど、私昔から歌が下手なのでカナリアという名称は不釣り合いかと…」

カナリア、そう呼ぶと加減な顔をして「その呼び方はなんだ」と聞いてくるかと思ったのに
やっぱりヒョンの好きな人でジミンのカナリアちゃんでもあるこの子は一味違う。

「っふは……そうきたかぁ」

カナリアは、見た目の愛らしさと美しい鳴き声を持った鳥だ。

ジミンにとってようは君は、誰にも見せたくないほど可愛くて惜しい存在ってことなんだろう。まあ分からんでもないけど、やっぱり僕には分からないかな。

ヒョンのお嫁さんになるだろうからそもそもそんなことになるわけないけど、
この子じゃきっと、僕の飢えは救えない。

「 …つまんないかもしれないけど、僕の話聞いてくれる？」

貴方「先輩が、話したいのなら」

ふわっと微笑んだり彼女は出会った時よりもずっと柔らかく笑える人になっていた。恋をしてるんだな。

羨ましい。

僕はずっと、この酷い喉の渇きを潤してくれる人が欲しかった。

「僕の実家ね、ちょっと大きい会社で。僕はそこの跡取りだったんだ」

貴方「ああなるほどそれで………今は…違うみたいですね」

「うん、そう。見かけだけ綺麗に生まれてきたのはいいけど、中身が空っぽだったから、人一倍努力しなさいと当たり前に課題が与えられてた。」

それはきっとあの頃、学校の先生や同級生に話していたら問題になっていたんじゃないかと思う…………いや、なってたはずだ。

だけど僕は弱くて、心も、体も衰弱していて、何より、逆らえばこの小さな心は完全に引き裂かれるかもしれない。

そう思うと暗闇の中で蹲ってたった一人で泣いてる方が楽だった。僕のことを子供どころか人間として扱ってくれない母と父が憎かったけど、でもそれ以上に怖かった。

＂一人で生きられるようになりなさい＂

＂誰にも隙を見せてはいけません＂

誰かに愛されたい、その誰かが両親だった頃もあった。

ただの人間が誰かの手助けなくして生きられるはずがないじゃないか、そんな考えが芽生えたから、なんでこんな思いをしないといけないのかよく分からなくなって、逃げ出した。

『 …お前くらい、自分を大切にしてやれ』

どこかにあると信じてた楽園を探しに。