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貴方side
愛ってどんなものなんだろう。
虹を想像する幼い子のようにそんなことを思っていた私が出会った、たった一つの恋。それが先輩だった。
ユンギ先輩は私にとって最も未知な存在だ。
知りたくて、教えてほしくて。
先輩のことを一つ知ればまた距離が近づき、先輩のことを一つ教えてもらえればまた見られる表情が増える。
近づいてもいい、君からこっちに来てほしい、そんな風に立ったままの先輩がいて、きっと私はそこに辿り着いた唯一だったんだ。だから先輩は私のことを特別だと言ってくれるし、私自身もそう思ってる。
知ることは楽しくてそしてそれと同じく怖い。自分の知らない世界は誰だって恐怖対象だろう。それは人間も同じ。むしろ、パターンで造られておらずそれぞれ成長する人間はもっと恐ろしいんだ。
だから、魅力的なんだろうけど。
��母さんには関係ないだろ………っ！��
そんな叫び声に少し肩が震える。声の主が恐らく私の知り合いであろうから益々変だと思った。
部下の方に呼ばれて少し席を外しているユンギ先輩に代わって、僭越ながら挨拶をしようと廊下に繋がる扉を躊躇なく開けた。
ビクッと背中が揺れて、振り返れば驚きに染まった目がさらに見開かれ、私を見つめる。
「 こんにちは、テヒョン先輩」
TH「 ……い、今の………」
「 ああ、お母様には関係ないというお話ですか？そうですね、あれだけ叫べば当然聞こえますね」
ため息を吐いて自分の髪を片手でくしゃくしゃとしながら先輩がマジかと呟く。
申し訳ないくらい私には空気を読むことができないので、今なんて声をかければいいのかすら分からない。ジミンオッパに言わせてみれば、それを申し訳ないと思えるようになったのは成長らしいけど、私が普通ではないことは自分が一番よく分かっているからもどかしい。
そう、最近はもどかしいんだ。
なぜか今になって私にも皆んなのように思慮深いフリができるんじゃないかって思えて、そして良くしてくれる人達に何か恩返ししてあげたいから。
今の私じゃとてもじゃないけど誰かの気持ちを考えることはできても答えを出すことはできない。どうしたものか。
そんな優しくて温かい言葉を知らないから人を思いやっているフリすらできない不良品の私が、本当に、ユンギ先輩の隣にいてもいいのかな。
TH「 カナリアちゃんに俺の話を少し聞いてもらえば、楽になるかな」
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作者名：愁 | 作成日時：2020年1月27日 18時
