ステラ［YG］ (ページ27)

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YG side

この迷路に出口があるのか、それとも、そもそも抜け出す術なんてないのか。

優しくて美しかった母さん。そんな母さんを愛していた父さん。
お互いに愛して大切にしていた二人だったから、思わぬすれ違いにぶつかってしまったんだろうか。

＂大丈夫＂

＂ママはユンギのことを愛しているから＂

その言葉は俺にとって呪いみたいなものだった。

母は愛していると言いながらも、父のように育つ俺を恐れていた。

俺の頬を撫でて、柔らかく微笑う。
その顔も冷たい掌も言葉も本心だったのかもしれない。それでも、その瞳が語っていたのは恐ろしさだった。

全てを愛してほしかったわけじゃない。
その道を歩かなければいけない俺に寄り添っていてほしかった。

冷血になっていく、人を殺すのも簡単で、組のためなら何も厭わない。そんな人間になりたくないと葛藤していた俺と向き合ってほしかった。

＂ママが目を覚ましたら、一緒に絵本を読もうね＂

組同士の紛争に巻き込まれて亡くなった母は、最後まで俺のことを4歳のユンギとして見ていた。

握られた手はいつもよりずっと冷たくなって、血だらけの父親が青ざめた顔して入ってくるまで俺はそこから動かなかった。

母さんは死んだのか。
妙な気分だった。

14歳の俺に絵本を一緒に読もうと微笑むあの人がもう目を開けない。なぜこんなに虚しくなるんだ俺は。

その日から父は心が死んだらしく、以前よりも仕事を優先していた。だから俺一人迷路の中に入ってしまった。

いつ落ちたのかわからない奈落の底をぶらぶらと意味もなく歩いていた。何度転んだのかいつ出来たのか分からない傷をそのままにして歩き続けていたら、もう出口を探す力もなくなって。

このままでいい。どうせ光なんか見ても眩しすぎるだけだと思えて、涙が出てもそれが血なのか汗なのかすら区別がつかない。

Aに出会って、光を見た。
その光は、思っていたものとは違って、ただ明るいだけじゃない。ゆらゆらと揺れながら闇を柔らかく包み込むような光。

＂怖い？あなたが？＂

＂子猫みたいで可愛いですよ＂

君は俺の腕を引っ張った。

ああついに俺も狂っちまうのか。誰かを愛するに足らない器がぐらりと揺れて君への愛が流れていく。

自信がなかった。父さんのようになってしまうのが嫌だった。

＂一緒に生きよう＂

それでも、光を求めずにはいられなかった。