７：迷路 ページ25
YG side
願うことはただ一つ。
俺の大切な人がどうか傷つきませんように。
貴方「 先輩！」
「 ん？」
貴方「 すごいです！庭に池があります！」
俺の家を見ても、引かなかった。
ずらっと並んだ強面の組員にも、いかにもって感じの佇まいの家や車にも、Aは全く動揺しなかった。
ここまで来るとお前が怖いよとあれだけ心配してた自分が可愛く思えてちょっと笑えた。
やっぱり、Aは色んな意味で他の人とは違う。
「 お前のところも金持ちマンションだろ」
貴方「 だけど、作りは他の部屋と全く一緒ですし、そもそもわたしは…」
何か言いかけて曖昧に微笑ったA。
やっぱり、引っかかる。
引っかかるけど、その先を聞いても俺の元から逃げないでくれるのかが分からなくて聞けないでいる。
今俺がいくつかの選択の前に立たされていて、君が俺を引っ張ってくれたらいいのにって思ってる。手を離さないでくれたら、もしかしたらこの迷路から抜け出せるんじゃないかって。
その選択の先に君がいる道が必ずあるなら、君がそこにいてくれるなら、何度だって失敗したって辿り着くから。
「 A、俺の傍から離れないで」
貴方「 …どうしたんですか？」
「 んー」
猫みたいにAを抱きしめて擦りよると、案の定組員たちは騒つく。え、まじすか？みたいな視線がグザグサと刺さる。
俺は特定の誰かを愛したことは一度もない。
母さんを亡くしてから心がなくなってしまった父さんをずっと見てきたから、怖かった。俺もああなるんじゃないかって。
だけど、結局は愛に逆らえなくて。
一人で生きるには辛すぎるこの世界で、負担を分かち合ってほしいと言いたくなる。そんな酷いこと、できないのに、したくなるんだよ。俺は弱い人間だから。
貴方「 先輩、私のこと好きですか？」
「 …ああ、好きだよ」
貴方「 それなら、傍にいますよ。先輩の迷惑にならないのならずっと」
一緒にいたら、今俺の頭を撫でるこの小さな手に血が付いてしまう日が来るかもしれない。
それでも、この選択をした自分を恨まずにいられるだろうか。
「 お前は俺が守るから」
貴方「 ふ、先輩今日甘いですね。かわいい」
「 食うぞ」
貴方「 どーぞどーぞ」
「 警戒心なさすぎて逆に不安になるんだけどお前俺が男だって分かってるよな？」
貴方「 当たり前でしょ(笑)」
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作者名：愁 | 作成日時：2020年1月27日 18時
