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貴方side
YG「 A、明日俺学校行く」
「 珍しいですね」
YG「 俺からしてみればお前の方が珍しいけどな」
その言葉の意図は何となく分かっているつもりだ。
何たら組の若頭、時期総頭になるであろう彼にわざわざ近づこうとするような人はほとんどいない。
いたとしても、彼の整った容姿やネームバリュー、お金の匂いを嗅ぎつけた人だけだったみたいだ。
先輩はそういう人がすごく嫌い。
だから、私みたいな人間が気になるんだろう。
「 ユンギ先輩の好きなところその一。いい匂いがするところ」
YG「 …急になんだよ」
ひひ、と笑ってみせると、ユンギ先輩は目をパチクリして、そのあとすぐに深い微笑みを見せた。
「 その二。私と話すとき目を見てくれるところ」
同じだった。先輩と私は、よく似てる。
皆んなが当たり前だと思っているものを持っていない。欲しくて欲しくて仕方ないのに、努力したってどうしようもない。どうして自分はこう生まれてきたんだと恨んでしまうくらい、他人からすると可哀想な人達。
「 その三。自分の大切なものを、守りきれると確信したものだけを手元に置くところ」
人間は欲張りだ。
欲しいかどうか、正確に判断する前に何となく苛つくから、何となく目が惹かれるから、そんな曖昧な理由で他人の幸せに手をつける。
自分の幸せを守りきれない人間がそう愚かに手を差し出せば当然、掌にあった幸せは簡単に落ちていくだろう。
「 ユンギ先輩は、私が出会ってきた中で最も会いたくなって、知りたくなる人です」
多分、これを恋だっていうんだろう。
だけど固有名詞にすると途端にあなたは私から離れていく。分かってる。だって、先輩優しいから。
生きている世界が違う。
そんなわけないけど、そうなんだ。
小説の召使である主人公が公爵との逢瀬後に涙を流しながらそう言うシーン。同じ人間だと思っていないのね、と思っていたけど今なら少し分かる。
先輩の私をこちらに来させないように線引きしてるその眼差し。
分かるんだ。きっと試してる。私のこと、永遠を謳えるのか、感覚的に生きて感覚的に死ねるのか。
誰かのために死ぬ。それが恋なら、誰かが待っている家に帰るのが愛なんじゃないか。
終わりのない旅をしている彼を引き止めるのが私だと誰でもいいから言ってくれないかな。
YG「 早く行かねえと会長が心配するぞ」
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作者名：愁 | 作成日時：2020年1月27日 18時
