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『あー聞いた、その話』
「えっ！いつ！？」
『忘れたけど…福田から聞いたぞ』
その日の夜、夕飯を食べながら秘書異動の話をしたらとっくに聞いていたという彼。
しかもなんとも思ってないみたいだし…私の中で違和感が残った。
「嫌だとかないの…？」
『なんで嫌だと思うの？』
「だって伊賀さんが居なくなってどうしても秘書は私じゃないと嫌だからって！だから私会社に復帰したのに」
『最初はそうだったけど、秘書の代わりが見つかればお前だって専業主婦になれるだろ？福田にもそう言われて、俺もお前が家のことに集中してくれた方がいいし』
…福田さんに丸め込まれたの！？
なんか納得のいかないと思えど、社長の彼が決めたことなら理解するしかない。
女性ではありませんようにと強く願った。
『なにが気に入らない？』
「気に入らないとかじゃないけど…」
『ん？』
「…女の人だったら…やだもん」
『…お前可愛いな』
「…っ！…こっちは真剣なのに！」
『大丈夫だよ。例え女でも俺は靡かないし、お前よりいい女いないから』
こうやって拓弥くんはいつも私を安心させてくれる。
私だけ余裕がないみたいで悔しいけど、彼のそんなところに助けられている部分があるのは事実で。
前向きに考えるしかないと腹を括った。
それでもこの時気付いていれば良かったんだ。
そんな全てが上手くいくわけないって。
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作者名：すまいる。 | 作成日時：2020年6月3日 18時
