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その遺書には、
“匠海、ごめんな。幸せになれよ”
その一言だけが書いてある。
事件が起こった当時にも見せてもらったが、何度見ても心がえぐられる。
そして改めて心底後悔した。
自分が成り行きで社長になったことを。
今までも自分を恨んできたけど、より一層それが強まった。
父「それをどうするつもりだ」
拓「これ…北村に返していい?」
父「…え?」
拓「今しか返すタイミングないと思うんだ。…今じゃないと意味がない」
きっとこれを見たら北村は、全部やめると思うから。
自分で人生を壊す前に、止めてあげたい。
北村の親父さんの言葉で。
拓「頼む。今しかないんだ」
父「…なにがあったんだ」
拓「それはまた今度ちゃんと話す。だから…」
言葉少ない俺を許してくれ。
一生のお願いでもいい。
もう…時間がないんだ。
父「…分かった。元々俺に宛てた手紙じゃないしな」
拓「…ありがとう」
父「会社のことは全てお前に任せてる。俺はなにも言わないよ」
これで全てが終わる。
そう思った。
俺がこれを渡すまで、何も起こらなければいい。
そんな願いをしながら手紙を鞄にしまった。
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作者名:すまいる。 | 作成日時:2019年10月23日 16時