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拓「…」
こっちの視線が社長に伝わったのか、数秒も経たないうちに社長もこっちに気付いていた。
目が合ったとき社長はかなり驚いた表情をしていて歩いてた動きが一瞬止まったが、それでもすぐに目を逸らした社長は女性と2人で俺らが座ってる所から5つ席を空けて隣に座った。
祐「なんで社長が、、、」
よりによってなんでこのタイミングで鉢合わせないといけないのだろうか。
それに、何故社長がここを知ってる?
何もかも理解が出来なかった。
神様はどこまで意地悪なんだろう。
こんな時にAと社長を会わせるなんて…。
そう思ったら、全てに自信をなくした。
「もう帰ろう?祐基」
祐「あ…うん、そうだね」
さすがにAも限界だったのか、彼女の気持ちを察してすぐにお会計をしたあと席を立つ。
それに気づいた社長がチラッとこっちを見てきて互いに目が合ったため、俺らは軽く頭を下げてお店を後にした。
外に出るとなんだか高級感漂う店内と別世界のような気がして、吃驚するほど気が楽になる。
祐「びっくりしたね、社長が来るなんて」
「…うん。ごめんね、無理矢理お店出るようなことしちゃって」
祐「いやいいよ。俺もなんとなく気まずかったし、逆にありがたかった。女の人と一緒だったよね?Aも知ってる人?」
「いや、知らない」
祐「そっか…」
少し力の入ったようにそう答えた彼女を見て、また自分に憎悪感を抱く。
Aが知るわけなんてないのに…。
それに、元彼の女性事情なんて特に。
「帰ろう?」
祐「うん。終電ギリギリじゃなくて良かったね」
「そうだね」
2人で駅まで歩く中、隣にいるAのことしか考えられなかった。
この先もこうやって隣にいてくれたら、どんなに幸せだろう。
そんな夢を見ながら…。
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作者名:すまいる。 | 作成日時:2019年10月23日 16時