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タカシと私でお店に到着する。


どうしたら良いものか…

先に思いやられながら店内に進むと

ユーキがこちらに気付き、手招きした。


「遅いよ〜」


待ちくたびれた、というように

ユーキは眉を下げてため息をひとつ。



「コーイチ〜!A来てくれた〜!」



私を呼びまくっていたという当事者は長椅子の上ですやすや寝ていた。


呼び掛けても返答がないくらい、爆睡している。




「ユーキ、この人本当に酔ってるの?」




イマイチ、信憑性のないそれ。

しかしユーキはテーブルの上のグラスを指差し、「ご覧の通り」と言う。



…確かに、かなりのグラス。


飲み干されたグラスを横目に彼を叩き起こした。




「ねえ、コーイチ、」



時々声を掛けながら何秒かすると

ぱち、と眠そうな二重が現れる。




「…Aや」



「そうですけど。

呼ばれて来たんですけど!」



そう言っても

意識のハッキリしない彼に何を言っても効かない気がした。


すると彼は力無くふにゃあ、と笑った。




「ふふ、

会いたかった」



「は、?!」




とろっとろなその口調。

彼は私めがけて手を伸ばしてくる。



「ちょっと」



起き上がったそのままに

私の腕を掴み、隣に座らせる。



「こいつやべーわ」



目の前から低い声で呆れるユーキの呟きが聞こえる。

コーイチなんて興味無さそうに、残っていた料理をつまんでた。




「タカシ?」


「えっ、今気づいたん」



私の腕をまだ離さない彼は

ユーキの隣に立ったままのタカシを、面白くなさそうに見つめる。



「俺、もうむり」



タカシのことを結局放っておいて、コーイチはゆっくり立ち上がった。

前髪をかきあげてキャップを被る。


そして私を連行するように席から離れて。




「俺払っとくから。介抱こいつに頼むわ。じゃあ、また」



と、一方的に別れを告げたコーイチ。



「嘘やん」「待って」、後ろから声が聞こえるというのに

彼は聞こえていないように会計をし、店を出た。





________





「ユーキ、」


「んー?」


「Aってあんなんやったっけ?」


「びっくりした、なにそれ」

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作者名: | 作成日時:2017年11月6日 17時

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