影と月 (ページ22)

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「俺と、電話しててもええの？」

どくん、

と何かが私を責めるようだった。

「…あー…、ちょっと気になっただけやねんけど

そういえば好きな人おるよな…って思い出して」

あの時はそのまま流してたけど

まさかこんな時に影響が出るとは思ってなかった。

「A？」

「…っごめん」

途端に何を言えばいいのかわからなくなる。

口ごもっていると、彼は何かを察したような口調で続けた。

「…やっぱり、なんでもない。

俺、明日朝から撮影やから。そろそろ寝るな？」

「あ、うん。おやすみ」

「おやすみ」

電話、ありがとうって

言えなかった。

そのくらい、思考が停止してて

言葉が見つからない。

絶対、変に思われた。

タカシには、知られたくない。

自分の汚い部分を見られるのが、怖い。

「最悪だ…」

完全に彼に甘えきっていたのが浮き彫り状態。

不審に思うのも当然だ。

どうしたら、良い？

好きな人はひとりなのに

そのひとりを好きになった重さは

きつく私にのしかかる。

あなたも、きっと、

同じ。