影と月 (ページ13)

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あいつはどこか俺と似ている。

小さい頃から一つのものに熱中すると周りが見えないし

良かれと思って言った言葉がキツくて誤解されたり

めちゃくちゃ可愛い奴なのに、どこか損してる。

まあ、それはさておき。

これはあいつがドラマの話をする前日。

「あれ」

俺は仕事が終わり、服でも見ようかと街をぶらぶらしていた。

と、信号待ちをしている、すらりとした長身の男を見つける。

あのジャケット結局買ったんじゃねーかよ。似合ってるし。

なんて思いながら、見覚えのある横顔に突進していった。

「たーかーしーじゃーん」

「おお？！タクヤ？！なにしてんの！」

視線がスマホから俺へと移り

すぐさまニコニコと八重歯を見せる。

ほんと、俺のこと好きな。

「仕事終わり。タカシこれからどっかいくの？」

「いや、これから帰るところやってん」

「じゃあ暇だな、メシ食おうぜ！」

「え、ええの。ええの！」

「ええよ」

コロコロと表情を弾ませる様子は大型犬みたい。

たまにはいいだろう、と近くのごはん屋さんへとレッツラゴー。

　

「あ、タクヤ、俺な、Aとドラマ出ることになってな！」

食べながら喋るから若干翻訳に時間がかかった。

「…まじ？二人で？」

「そう。メインメンバーみたいな感じ」

「すげーじゃん」

なんか、楽しそう。

「あいつドラマ初めてだと思うから、」

タカシにあいつのことを言おうと思ったら

向こうから話題を切り出してきた。

「A、不安な顔してて。

ちょっと俺がしっかりせなあかんなあ、なんて思った」

「…そう」

なんか、俺の出る幕ない感じ？

苦笑しそうになりながら目の前の彼の話を聞く。

「でも厄介なのが、A、一人で頑張るから…

逆に怖い顔されそうや」

あははー、といつもの調子で笑っているけど

タカシなりにフォローの仕方を考えているみたいだった。

へえ～。タカシがねえ。

「でも今回ばかりは頼りになる人いないと、ね？」

「うんうんうん。そうやんな」

ふんす。

効果音つけたら絶対それ。

鼻の穴を広げて気合を入れる様子が可愛かった。

「せっかくもらった機会やもん。

グループのためにも、Aのためにも、

俺が引っ張らな」