◇狐、１５８ ページ8
、
刀が弾き飛ばされた瞬間こそは、それこそ、宙を舞う刀を目で追っていた女だったが、すぐに蓮から距離をとるために後ろへ飛んだ。
距離をとって、全体を冷静に見渡すためである。
それをすることにより、女は、誰が自分の邪魔をしたのかがはっきりとわかる。
「･･･あら？ あらあら？ 『それ』を庇って何の利があるのん？ 無駄な体力使うだけだよ。ね、トウリョー？」
「敵族に『頭領』と呼ばれる云われは、ない」
「･･･へぇ」
蓮を庇うように女と対峙しているのは、まぎれもない、優一だ。
しかし、女はまったくもって慌てない。
それどころか余裕そうな笑みを称えているではないか。
弟とよく似ている目を吊り上げて睨みつけてくる彼を見て、女は挑発的に言った。
「威勢は良いんだねぇ･･･。けど、それがいつまで持つかな？」
「･･･っ」
「沖田の『忌み子』との戦い･･･。相当キツかったんじゃない？ 体力ほとんど残って無いと思うけどな〜」
「けど、手加減なんてしないからぁ」と、ヘラヘラ笑い、女は刀を術で引き寄せて再び掴む。
その一連の動作は余りにもなめらかであった。
スゥッ、と優一の背に嫌な汗が伝う。
女が言うように、はっきり言って優一の体力はもうほとんど残っていない。
傷は、そう多くは無いものの、一つ一つが大きく、命に関わる重さが違う。
(･･･せやけど、)
チラリと固く目を閉じている蓮を盗み見た。
彼女には聞きたいこと、言いたいことがたくさんある。
何より、自分の気持ちはまだ生きているのだ。
「･･･死んでも守り抜くわ、阿呆」
式神たちの札を何枚も用意し、優一は女に刃を向けた。
、
かつての恩人が目の前で倒れたとき。
京介は迷わず沖田の側に駆け寄り、身を揺すった。
「お、きた･･･さん。っ、沖田さん！！」
震える声で繰り返し彼の名を呼び続けるが、効果は何ひとつとして現れない。
それでも必死に呼び掛けていた時だった。
＿＿＿＿＿ヒュンヒュン、ヒュンヒュンヒュン。
「･･･？」
京介の耳が不思議な音を拾いあげた。
それもかなり近い位置から聞こえてくる。
音のする方向を見ようと首を捻って立ち上がると、音はいっそう大きく聞こえた。
キラリと木々の間で光る何かが光ると、とたんに牙狼が唸りだす。
「(京介、気を付けろ。血濡れの臭いだ)」
牙狼は京介を守るように身を乗り出した。
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京夜(プロフ) - アルテナさん» ありがとうございます！！ コメント、とっても嬉しいです！！ これから更新スピード上げられるように頑張りますッ！ (2015年1月4日 22時) (
レス) id: c45efebd4a (このIDを非表示/違反報告)
アルテナ - とても面白いです！！！続きが楽しみです！更新頑張ってください！ (2015年1月4日 20時) (レス) id: ab1d996a39 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：京夜 | 作成日時：2015年1月1日 12時
