◇狐、１８７ ページ37
、
一つ下の、小生意気で可愛くない返事を返した鬼の子に、京介は呆れたように話す。
「知っとる。せやからこれ持って来たんに……」
ほら、と手に持った毛布を渡しながら京介は陽也の隣に音を立てぬように座った。
これに驚いたのは、無論、陽也だった。
毛布を持って来たことはもちろんのことだったが、それより何よりごく自然に京介が自分の隣に腰を下ろした事にギョッとした。
「……なんや、文句あるんか」
「あ、いや、……その、別に…」
「………毛布、掛けとけ。北海道よか温いやろけど、お前の格好は見てるこっちが寒なるねん」
京介は陽也の袖のない着物と、大きく開かれた胸元をちらりと見ながら一つ息をつく。
陽也は一瞬毛布をどうしていいかわからずにいたが、とりあえず軽く広げて膝にかける。
「……お前、弟はどうした」
「…明王兄さんたちに任せてきただ。勇一、最初は一緒になんて寝たくねぇって文句言ってたけど、すんなり寝てくれたみたいだ」
「そうか…」
ふふっと、兄としての柔らかい笑みを見せた陽也に、弟としての面しか持たない京介は少しだけむずがゆい気持ちになる。
「……お前は？ 休まないのか？」
「それはお互い様だべ？ 走り回って、刀さぶん回して。疲れてんでねえの？」
「まあ、それは、そうだが…」
「理由、当てたげよっか？」
歯切れ悪く答える京介に、陽也は兄の表情を崩さずに笑った。
その表情に、彼の美しい翡翠色の瞳に、京介は少しだけ魅入られてしまう。
「悔しいんだべ？ 自分の力が及ばないで大切なものが奪われちまったから」
「……」
「今は何ができるわけでもない、むしろ次に向けて休むことが今すべき最優先。そう理解はしていても、体は休んじゃくれねえんだ」
「……ああ」
「……わかるよ。俺も同じだ…」
そう言って視線を伏せた陽也は、次の言葉をつづけなかった。
京介も肯定の代わりの無言を返す。
自分に力があれば、などと仮定を述べても仕方がない。
理解はしていても、それもかみ砕いて飲み込むことができない。
(……A、)
京介の胸元の鎖が、小さく音を立てた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 27人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
京夜(プロフ) - アルテナさん» ありがとうございます！！ コメント、とっても嬉しいです！！ これから更新スピード上げられるように頑張りますッ！ (2015年1月4日 22時) (
レス) id: c45efebd4a (このIDを非表示/違反報告)
アルテナ - とても面白いです！！！続きが楽しみです！更新頑張ってください！ (2015年1月4日 20時) (レス) id: ab1d996a39 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：京夜 | 作成日時：2015年1月1日 12時
