◇狐、１８２ ページ32
、
「他に、質問は？」
流れが止まった部屋に陽也の高い少年の声が木霊する。
「頭領、」
「なんだ？」
「俺からも質問、ええやろか？」
今度は京介の低い声が響いた。
優一は彼の質問には直接答えず、押し黙り、スッと前を見る事で表した。
京介はこれをよしとする。
「さっきの沖田との戦いで、……お前たち三人以外に海城の者は誰一人として居なかった」
「………んだな、そうだべさ」
「あれはどういう事や。さっきからの口ぶりからすると、まさか一族は三人だけ、なんて事でもないんやろ」
「まぁ、ねぇ。そりゃあ他にも一族の人間は居るべ」
存外、すんなりと答えてくれた事に驚きつつも、京介は続けざまに言葉を投げる。
その声は、きっと、とても低かっただろう。
「なら、なぜ居ない」
「……」
「海城の者は頭領たち本家の人間に争いを任せきってしまうほど薄情なのか？」
「それ、は……」
焦るような、困っているような表情に勇一は顔を移した。
言って良いのか、言わない方が良いのではないか、そんな様子がうかがえる。
一方で陽也はただ黙っていた。
何も言わない事を決め込んだらしい。
だが、京介はその兄弟が何かを言う前に否定の言葉を口にした。
「……まぁ、そんな事はないだろうな。お前たちの口ぶりからして一族の者はかなり海城の女頭領を慕っているみたいやし」
「…………よくわかっただな」
少しだけ意外そうに言った陽也に間髪入れずに京介が噛み付く。
「慕われる頭領ってのは、まず家族にも愛されるような奴や。お前ら二人はどシスコンやろが。見ててホンマわかりやすいわ」
ケッ、とでも言いだしそうなやさぐれた顔で指摘してきた京介に、海城兄弟は今度こそカチリと固まった。
予想外の言葉が出てきたからだろうか、従兄弟の大人二人が場違いにも吹き出してしまったと言うのに、それにすら気がつかずに凍っていた。
しかし、しばらくすると頭も正常に動き出したらしく、ゆっくりと言葉を口で転がす。
「シッ、」
「「シスコ、ん………？」」
「フハッ、それ言えてる」
「そう言えばお前たちは小さい頃から巴にべったりだったな」
やっと動き始めた彼らの頭に追い打ちをかけるように不動と豪炎寺は笑う。
陽也は気恥ずかしさのためかギッと大人たちを睨みつけたが、いかんせん顔が赤い為にあまり効果は見込まれなかった。
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京夜(プロフ) - アルテナさん» ありがとうございます！！ コメント、とっても嬉しいです！！ これから更新スピード上げられるように頑張りますッ！ (2015年1月4日 22時) (
レス) id: c45efebd4a (このIDを非表示/違反報告)
アルテナ - とても面白いです！！！続きが楽しみです！更新頑張ってください！ (2015年1月4日 20時) (レス) id: ab1d996a39 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：京夜 | 作成日時：2015年1月1日 12時
