◇狐、１７２ ページ22
、
聞き慣れない声が屋敷中に響き渡る。
京介はハッとして門の外まで一気に駆けた。
「おい、海城！」
「･･･動き出しましたよ、あの羽虫ども」
もとから門の外にいた陽也にひとまず声をかけると、一瞬だけ目配せをしてきたがすぐに視線を空中に逸らす。
同じように空を見上げると、そこには憎たらしく笑う沖田の頭領の姿があった。
「、京介！」
「兄さんっ！！」
その時だ。
屋敷へと続く長い長い階段の下の方から、上へと駆け上がってくる兄の姿が見えた。
隣には海城の三番目の鬼がいて、ああ、あっちも一緒に来たんだと悟った。
海城の次男坊のパタパタと軽い足音が響く。
「兄ちゃん、姉ちゃ………、頭領は？」
「あっこだ。ほら、見えるか」
剣城兄弟とは違い、素直に駆け出した弟を受け止めた陽也は上の方を指差して見るように促す。
そこには、こっちを見下ろしてニコリと胡散臭く笑う沖田の頭領と、抱えられた姉の姿があった。
とたん、勇一の一つだけ覗かせた目がキツく釣り上がる。
彼の怒りによる覇気がその場の全員を襲うように突き刺さり、京介の肌がビリビリと震えた。
「アイツ……、『閻魔様』に手ェ出しやがって………っ！！」
憎らしそうに勇一は吐き捨てた。
その声音は到底少年が出すようなものではなく、大の大人が怒りに震えているような、そんな色がにじみ出ている。
陽也は静かに怒りを表す弟に、どこか悲しみの色を浮かべながら彼の頭に手を置いた。
そんな様子を見ていた優一だったが、不意にあることに気がついた。
「……？」
あれ、と。
驚いた拍子に出そうになった声を抑えながら、ゆっくりと確認のためにもう一度『勇一の瞳』を見る。
そして、唖然とした。
彼の瞳は、じわりじわりと中心に向かって翡翠色から、深い蒼に染まっていくのだ。
しかし完全に染まりきるまえに、少しだけ残っていた翡翠色が再び蒼色を押し返し、勇一の瞳の色は元に戻っていた。
「兄ちゃん、ごめん。ちょっと動揺してただ」
「ん、」
色が戻ってから勇一はすぐさま陽也に向かって笑って見せた。
陽也もその様子を見て軽く返事を返す。
「さぁ、もういいかい。剣城の頭領と海城の小鬼たち」
頃合いを見計らっていたのだろうか。
ずいぶんとつまらなさそうな声が頭上から降る。
剣城兄弟と海城兄弟はハッとして同時にはるか空中に浮かんだ人間を見た。
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京夜(プロフ) - アルテナさん» ありがとうございます！！ コメント、とっても嬉しいです！！ これから更新スピード上げられるように頑張りますッ！ (2015年1月4日 22時) (
レス) id: c45efebd4a (このIDを非表示/違反報告)
アルテナ - とても面白いです！！！続きが楽しみです！更新頑張ってください！ (2015年1月4日 20時) (レス) id: ab1d996a39 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：京夜 | 作成日時：2015年1月1日 12時
